トラックボール個別面談

Kensington Orbit (Orbit USB/PS2 :Model 02641)

Kensington Orbit
メーカー Kensington
ボタン数 2ボタン
ホイール 無し
エンコーダー ゴム巻きシャフト式
ボール支持 アルミナセラミック球による3点支持(推測)
ボール径 40mm
コネクタ PS/2・USB

Optical後のOrbit

KensingtonのOrbitは、2ボタン、40mmボールのシンプルながらバランスの良い構成と、 エントリーモデルだからと手抜きをしないしっかりとした作りで人気の ベーシック・トラックボールです。

そんなOrbitの最新モデルは、Orbit Opticalは、 Orbit譲りのフィーリング――手を置いて使うのが心地よいカーブと大きく良好な感触のボタンに、 シルバー & ブラックの精悍なフェイスと、光学式・点指示のなめやかな操球感をプラスした、 ベーシック・トラックボールの決定版です。

そんな後継機のある「旧Orbit」こと本機ですから、 最早お役御免と思いきや、なかなかどうして現役だったりします。

Opticalはコンセプトをしっかり引き継ぎ、それでいて見た目も垢抜けて エンコーダも光学式になって、ボールの操作感も官能的になりました。 なので、「今買うなら Optical」なのですが、 わずかながら Opticalが引き継げなかったものがあります。

それは、

なのですが、「コンパクト」で「ボールが固定されている」という特徴は、 お出かけトラックボールにはなかなか重要なのじゃないかしら、と思うのです。

お出かけトラックボール

OrbitとOrbit Opticalは共通の「手の置きごたえ」をしていますが、 Orbit Optilcalがデザイン的な見栄えをねらったこともあり、 翼を広げたようなデザインになっているのと比べ、 旧Orbitはこの置き心地が味わえる最小のラインを取っています。 (だから、Orbitのボディのフチは、絶壁を描くのです。)

どちらも充分コンパクトですが、よりちっちゃいと言うことが良い時もあるかな、と思います。 (逆に Optical系のデザインは「ゆとりがある」とも言えますが)

もう一つ、Orbit Opticalのボールは、実はただ置いてあるだけなんです。 据え置き型トラックボールとしては掃除のし易いことや、ボール着脱の際にボールが傷つくおそれがないこと、 何よりボールの露出面積をより広くとれること (半球以上の弧がなければ当然固定は出来ません)などのメリットがあるからです。

ですが、持ち運びの時に困ってしまうのがこの方式でもあります。

おなじく「置いてあるだけ」のExpert Mouse ですが、 ボールが固定される・されない以前に その大きさ故にお出かけにはちょっと不向きかなぁと思うのですが、 コンパクトはOrbitは気軽に持ち歩きたいトラックボールですので、 ボールがカバンのなかで踊ってしまうのは困りものです。

ちょっとコンパクトなところ、ボールが固定されているところは、 お出かけトラックボールとしては 結構大きなメリットです。Opticalの場合、 ボールだけ別にしまったり、適当なインナーケースを用意する必要があるのですが、 OrbitならノートPCと一緒にポンッと鞄に放り込んでおけばよいのでラクチンです。

(もう一つおまけに Orbit はOpticalと違い尖ったところの無い デザインなので、割れたり欠けたり傷つけたりしない安心感もあるのよね〜。)

このボタンが凄い!

もう一つ、Orbitの方が魅力的な点は、先に述べた3つの最後、「ボタンの感触が最高」なところです。 このOrbitのボタンは、Kensingtonや他社のフラッグシップ機も含めて全てのトラックボールのなかでも 間違いなくトップクラス。 操球感に物理エンコーダの限界を感じつつも なにげに猫がOrbitをよく使っちゃうのはこの至高のボタン感触のせいだったりします。

Orbitのボタンを素晴らしいモノ一つは、 そのボタン形状の絶妙さです。

Orbitのボタンはボタン一番奥側が捲れあがったような出っ張りがあります。 この凸凹がボタンの感触を劇的に良くします。 この突起のおかげでOrbitのボタンは その存在を触覚で指に訴えます。 特に中指側ではこの突起を指の第二節の腹あたりに感じるのですが、 この出っ張りに指を触れていること自体心地よいし、押すときも非常に押しやすいです。

ちょっとした刺激のある形状を持たせることで、 ボタンの感触を劇的に良くしちゃうのはKensingtonの得意技で、 5代目以降の Expert Mouse の折れ線突起や TurboRingの凹凸豊かなボタンなど、 逸品ボタンの枚挙に厭わないです。

Orbitの突起もこの例に漏れない絶妙の形状で、猫はとっても好きなのですが、 Opcicalではデザインを優先したのか無くなってしまったのが残念です。

Orbitのボタンを素晴らしいモノにしているもう一つは、クリック感自体です。

このボタンのクリック感はピントが合っているのにトゲトゲしないと言うか、 マイクロスイッチ特有のハッキリとしたシャープなクリック感を持ちながら、 カン高く響くこともない とても落ち着いたしっとりとした印象を受けます。

これは、ボタンフェイスとスイッチの遊びや、筐体の剛性、 ボタンフェイスの形状や肉厚、そしてマイクロスイッチ自身の品質といった いろんな要素が絶妙に作用してのモノでしょう。 猫の知る限りのマウス・トラックボールの中で1,2を争う絶品のクリック感です。

なによりこれがエントリー機だという事実に Kensingtonの最高の2ボタントラックボールを作ろうという 職人魂を感じて、猫はうれしくなってしまいます。

良品は時代を超える

Orbitは確かに時代遅れなトラックボールなのかもしれません。

まあるい本体にボールとボタンを配置して、下にパームレストをのばした無駄のないデザインは、 シンプルさと機能美があり猫は結構好きなのですが、 世間一般的にちょっと古くさいと言われる部類です。 そしてなにより機械式エンコーダというのが本機の時代遅れなイメージを決定的にしています。 本機のエンコーダは機械式ながら出来が良く、かなり使いやすいのですが、 気持ちよさでは光学式に何歩も譲ってしまいます。

こういった点をキッチリ対処し今時のトラックボールになったOrbit Opticalも出て、 すっかり現役を退いたOrbitですが、この不思議な魅力は何なのでしょう、 それでもOrbitを使いたくなるのです。

マウスのコストダウンが本格的になる前の時代の高い品質と、 見栄えにに振り回されない実直なデザイン、 そしてKensingtonの並々ならぬこだわりがそうさせるのかもしれないわ、 と猫はそんな風に思ってます。

各部の詳細

表 一見何もデザインしていないように見える本機ですが、 その描くラインはシンプルで機能美にあふれていて、 所有してみるとじわじわとその良さが伝わってきます。

OrbitはMacユーザに愛用者が多いそうですが、なるほど。
後ろ 手前から。

結構両サイドが絶壁です。 この絶壁がコンパクトさの秘訣なのですが、 デザイン的な難点でもあります。
左側面 横から見るとボタンがボディと一体の線を描いていないことが解ります。 このボタンの位置どりがまた絶妙なんです。
前 フロントビューです。

というわけで、手前から見るとそれほどでもなかったボタン−ボディ間の段差が コッチから見ると結構な高さになっています。
裏 背面です。 角の面取さえされていない とても真っ平ら底面は、切れ味の良い刃物でスパッと切り取ったようで、 最近のトラックボールデザインに慣れた目にはかえって新鮮な感じです。

ボールをハズすにはボール裏側のベロを押します。
ラベル ラベルです。

型番は 02641Yです。
ボタン ボタン・横から さてさて、Orbit 最大のウリの、素晴らしい感触のボタンの秘密に迫ってみましょう。

まずはこのめくれ上がったボタン縁です。 この突起は、ここから先はボールだよ、というフィンガーサインでもありますが、 ボタンの感触を素晴らしいモノにしてくれる機能もあります。 Kensingtonラインナップでは、本体との一体感がウリの TurboBallと、 実は本家 米Kensingtonがデザインしたんじゃない(らしい) Orbit EliteOptical 以外は皆この手の刺激物ボタンデザインが施されていて どれも素晴らしい効果を上げています。

もう一つ、ボタン形状からは、本体との大きな段差が効果的です。 本体の縁に、奥側にいくほどに高くなるボタン段差はボールをとても押しやすくしてくれます。

最後にこれだけ起伏に富んだボタン形状による、ボタンフェイスの剛性の高さも 重厚感のあるクリック感に影響を及ぼしています。 (これはキーボードのキートップの肉厚がクリック感に大きな影響を及ぼすのと同じですね。)
ボールとボタン ボールは上下の爪で止められていて、逆さにしても外れません。

後継機 Orbit Elite / Opticalではボールはただ乗っかっているだけなので 持ち運びにちょっと不便ですが、本機ではそのようなことはありません。
コンパクトなだけに持ち運び需要が高そうなOrbit系ですから、 これは案外ポイント高しですよ♪
ボールを外す ボールをハズします。

顔を覗かせるのはごくごく一般的な二軸ロータリエンコーダのゴムシャフトと、 白い アルミナセラミックスと思われる支持球です。
ルビー支持球 Orbitはロットによっては支持球が人工ルビー(合成コランダム)のものもあります。

Kensingtonのサポートによれば、アルミナセラミックと合成コランダムとの 違いはないとのことです。(ホントかしら?)
Eliteと比較―上から Eliteと比較―手前から Eliteと比較―クォータビューから 後継機との比較です。(ここではElite / Opticalを代表して Eliteとの比較です)

上から見ると縦の長さが変わらないモノの Eliteでは横幅が大きく伸びたのが解ります。ボタン位置は若干左右に開きましたが、 コアの位置はだいたい変わらずです。

手前から見るとこれだけ横幅が違うにもかかわらず左右方向に描く曲面が ほとんど変わらないのが解ります。Eliteではこの曲面のまま机面に接地するまでつづいていますが、 Orbitではボタン位置を越した当たりでスパッと切り取られてます。
横にゆとりがある分Eliteの方がボタンが押しやすそうにも考えてしまいますが、 高さや形状に工夫したボタンのおかげで、むしろOrbitのほうが押しやすいくらいだったりします。

ボールに関しては、ボールを固定する必要のないEliteのは周囲を えぐってあって大きく露出しています。 その分一方向に転がした際指が触れていられる長さが長くなります。なるほど〜。
隠しネジ 本機の空けるには本体上部の2箇所のネジと、 このラベル下の二つの隠しネジをハズします。
筐体オープン 筐体オープンです。

開けてみると、うわぁシンプルです。
筐体上面 注目すべき筐体上面の裏側です。

彫りの深いボタン裏面です。 ボタンを縁取りするように平たい面が周囲に見えますが よくよくみるとボタン半分で上下に切れています。
実は下側半周がボタン側のパーツで上に引っ張り上げる方向のストッパになっていて、 上側半周がボディ側の部品で押下方向のストッパになっています。 しかもネジ止め用の柱が押下方向ストッパに直についていて、 かなりしっかりと支えているんです。これは・・、こだわりだわっ!
中身 ボール周辺にしかほとんどメカ部品はありません。

ボール受けのボディ側の壁は、ボールと比較すると意外に高く感じます。
ボールユニット ボール受けとエンコーダです。
非常にしっかりと、作られています。
ボールユニット裏 ボールユニットの後ろから。

エンコーダの遮光板とセンサ、光源が見えます。
マイクロスイッチ マイクロスイッチはなんと Expert Mouseと同じ高級機御用達のOMRON D2F-1だったりします。
なるほどスイッチからして最上級、本機のボタンへの並々ならぬこだわりを感じます。 ああ、ど〜りで感触が素晴らしいわけだわっ!!

ただ、マイクロスイッチはロッドによって違う可能性もあり、 すべてのOrbitがこうだとは限らないのでご注意を。
エンコーダ 押さえのパーツをハズしたところです。

Kensington共通のこなれたロータリエンコーダですね。
残りパーツパラバラ というわけで、基板をハズします。

さすがに2ボタンのシンプルトラックボールだけあって ココまでばらすのもカンタンでした。
基盤 基盤背面です。
コントローラチップ コントローラ・チップです。

表面があれていていまいち型番が「CY7C6....」までしか読めなく、 具体的なチップ名まで特定出来ないのですが、 サイプレスの USBマイコンです。
大きさ比較 大きさの比較です。
マウスと同じくくらいとはいきませんが、 かなりコンパクトです。

ちなみにOrbitはこの USB・PS/2 版 ですら 国内発売は1999年、MS IntelliMouse は同世代です。 この時代のポインティングデバイスにはなんとなく共通の時代の息のようなものを感じさせます。
MableMouseと比較―上から MableMouseと比較―クォータビュー ライバル Marble Mouseと大きさ比較です。

意外に大きさが大幅に違います。というか、 Marble Mouseって結構大きいのね。

斜め上からみると、Marbleの独創性が際だちます。 後にも先にもココまでボールを露出させたトラックボールはありません。凄いっ!

大きさの面から言うと、ボール高の分Marbleはかさみそうです。
ボールの大きさ ボールとドリキャスのVMとの比較です。

40mmの中玉です。ブルーの透明のボールが綺麗です。 (Eliteで光らせようと思った開発陣の気持ちが解るような気がします。)
グラビア Kensingtonは本機をエントリー機としては作っていないのかもしれません。

かつての 初代MS IntelliMouseが3ボタン1ホイールという仕様でありながら 最高の品質を備えていたのとおなじように、 本機もメインストリームの商品として最高の品質を負わされているのだと思います。

今でもMacファンを中心に愛用者が多いのですが、 なるほど、これは良いトラックボールです。
確かに時代遅れの感はありますが、それでも時代に負けない良さがあり、 ほんの衝動買いで手にした猫もそれを味わうにつれ「買って良かったなぁ」と思うのです。

<総合評価>

繰球の気持ちよさ ゴムシャフトエンコーダにしてはスムースな部類ですが、気持ちよさは今一歩。
回り出しの滑らかさ ゴムの摩擦のおかげでカクンとはしません。扱いやすい回り出しです。
回転中の滑らかさ ゴムのグリップ力が少しだけ重いのですが、スムースです。
ドラッグのしやすさ しやすいです。
対腱鞘炎 手の甲に負担のかからない形状で、良好です。
コストパフォーマンス 後継機のいる今安く売られることが多いのですが、抜群の作りの良さを考えると 鬼のようにお買い得です。
三猫のおすすめ度 ★★★★
ハッキリ言って「機械式2ボタントラックボールの最高級機」と言って良い本機です。 仕様に抵抗を感じないなら迷わずおすすめですよ。