トラックボール個別面談

PLUS メクボール (MekuBall KM-600)

Microsoft Trackball Optical
メーカー PLUS
ボタン数 2ボタン (感圧式)
ホイール なし
エンコーダー Inductive Technology(TRAXSYS社製電磁誘導エンコーダ)
ボール支持 流体による面支持
ボール径 40mm
コネクタ Bluetooth (バージョン1.2)

もはや、文具メーカの時代

「もはや、文房具」とは ShopUさんのキャッチフレーズですが、 コクヨを始め、文房具メーカのインプットデバイスへの参入は、すでに現実のものとなっています。

文房具の世界へ目を向けると、同じ用を足す製品であってもカタチも機能もさまざまです。 これだけ歴史の長いジャンルなのに、目新しい新製品、アイデア物が後を絶たない 文房具だから、文具屋さんを見て回るのはとてもとても楽しいです。

そんな伝統を引きずってか、それとも多様性の強みを知り尽くしているからか、 文具屋さんの作るインプットデバイスは奇抜でビックリするデザインがしばしば。 コクヨの手の匠は、 誰もが目を引くアメージングでショッキングなデザインながら、 使いやすさについて考え抜かれた見事なアイテムで、 コンピュータ屋ベースのサプライメーカには 絶対できない出来でした。

そう、文具メーカは中庸でないことを恐れないのです。 だからこそ、PLUSはマウスを飛び越してトラックボールに参入しちゃったのです。

次世代の回転検知

しかし文具屋さんは凄まじい。 参入するからには中途半端なデザインでは有りません。 本機「メクボール」は、40mmボールを採用しながらも 信じられない小型・軽量さ。ボールを納める最低限の箱しかありません。 うーん、なんじゃこりゃ・・。

この小型ボディを実現したのが、英TRAXSYS社によるInductive Technology。 (トラックボールファンさんのニュース)

ボール内部に円盤状の電磁誘導アンテナを設け、それによる回転検知を行うシステムですから、 従来の光学式トラックボールのようにエンコーダにスペースを取られることは有りません。 2004年にお披露目になった技術ですが、実製品への応用はもちろん本機が初めてです。 うーん、やるなっ! PLUS

試作器メクボール
TRAXSYS社による
コンセプト機
メクボール

ごらんの通り、本機はTRAXSYS社のコンセプトモデルに 意外にもかなり忠実なことが解ります。

浮かせて回すというアイデア

この直接見ない・触れないエンコーダの採用もかなり驚きなのですが、 本機のビックリどっきりはこれだけにとどまりません。

本機のボール、支持球による点支持でもベアリングローラ支持でもないのです。 実は本機、ボールが水に浮いているのです。

光学式点支持のトラックボールは、そのなめやかな周り心地がすばらしいのですが、 なまじ摩擦力が弱いだけに 静止摩擦と運動摩擦のギャップにセンシティブになってしまい、 による周りだしが「カクン」としてしまう欠点があります。 (これは使い込み、油が回ることでかなり改善されるのですが)

一方、ベアリングローラ支持は転がり摩擦によりこの「カクン」感が 少ない快適な周りだしを誇ります。が、ローラ故に、モデルによっては ゴミの巻き込みによる 不快な振動が問題になることがあります。

その点、本機の「水に浮かす」支持は、 固体と触れるところがない故のウルトラスムース & スーパーライトな転がり心地 でありながら、静止摩擦と動摩擦のギャップが原理的に発生しない すばらしい周りだしを実現します。

また、本質的に常にボールを水でジャブジャブ洗っているため(笑)、 ゴミによる回転感の劣化もありません。うーん、一石二鳥ってやつだわっ!

二つの感圧式ボタン

しかし、精密機器に水をつかうとは大胆な発想です。 筐体の隙間から水が入ったらおじゃん、・・というのでは実用になりません。

そのため、本機ではボタンに Apple の Mighty Mouseの「スクイズボタン」で おなじみの感圧ボタンを採用することで、 ボタン部材の隙間を作らない設計になっています。うーん、見事な新技術利用の3段論法。 なんだかパズルのような匠なデザインです。

ただ、この一見ボタンの無い様なデザインは、なるほど素敵なアイデアなのですが、 いかんせんちょっと使いにくいかしら。 と言うのも、右と左のボタンは左右に向かい合って配置されているので、 何も考えないで右を押そうとすると左も押してしまいがちです。

反対側は青いボタンの部分じゃ無くって 斜め上の透明な部分に指を添えるのがコツなのですが、 この点は左右で一つのボタンとした Mighty Mouse は よくわかって居るなぁと言う感じ。 うみゅう・・。

ボールふらふら

ここまで、本当にびっくりデザインで、 PLUSの底力に驚かされてしまいます。うーん、凄すぎる。 特にボールを水に浮かせて支持するという発想は、 コンピュータ屋さんには出来ない発想、感服です。

ただ、「水に浮くボール」には、一つの疑問が浮かびます。 ――はて、手を離してもこのボール、止まっていられるのかしら・・。

なまじ摩擦がないばかり、そして水に浮くほど軽いボールは、 そのままでは風が吹くだけで動いてしまいます。うーん。

この問題に対処するため PLUS はまたまたおもしろいアイデアを 思いついてくれました。浮かんだボールが筐体上蓋に押しつけられることで 手を離した瞬間にボールが固定されるのです。 もちろん指を乗せた時はその指の重みでボールがかすかに沈み込むので、 回転するときは どこにも触れていません。うにゃっ! またしてもナイスアイデア。

ただ、このアイデア、基本的にはとても良いのですが、 どうしてもボールが上蓋に接触してしまう時があるのです。 このときの「ジョリッ」という感触は、せっかくの操球感に 暗い影を落とします。うーん、残念。

春一番の予感

とてもアイデアにあふれたすばらしいトラックボールなのです。

TRAXSYS社によるInductive Technologyをベースに、 アイデアからアイデアに連鎖させた本機は、ちょっとした技巧品のようです。 うーん、凄すぎるっ!

もちろんトラックボール史のマイルストーンとなることも間違いなしの本機ですから、 基本的に「買い」なトラックボールでしょう。 だからこそ、 前述のボールのトラブルと、ちょっと微妙な左右ボタンの押し心地が 残念なのではありますが、そこはそれ。 本機の魅力を台無しにするようなものではありません。

トラックボール参入第一弾からやってくれちゃったPLUSさんには、 これからも期待したいところです。頑張ってくださいね♪

各部の詳細

表 さて、何もかも斬新なメクボールですが、まずは上から。

本当にボールが収まる器だけといった様相です。 Apple でおなじみの透明な外膜があるような 最近はやりのデザインです。
後ろ 今度は手前から。

PLUSのロゴは、プラスチック形成による 立体ロゴですが、ちょっと高級感に欠けるかしら。
右側面 右側面です。

ロゴがない以外は手前からの見栄えとまったく区別が付きませんが(笑)、 こちらの半円状の水色の部分は、Apple Mighty Mouse でおなじみの 感圧式ボタンになって居ます。
左側面 今度は左側面。 注意書きシールがなければ全く右側と区別できません(笑)

こちらの水色半円も感圧ボタンになっています。
前 今度は奥側(後ろ側)

こっちの水色半円はセンターボタン・・ではなく、 BluetoothのRFモジュールが内蔵されています。
裏 裏側から。

かなりシンプルな作りになっています。
ラベル お水をつかうトラックボールなので、当然注意書きがあります。

水が入るとなんか雑菌とか繁殖しそうですが、本機は抗菌になっているので、 その点は安心です。・・かな?
ボタン 感圧式のボタンです。これまたMighty Mouse と同じく 押し込んでもクリック感はありません。

両側からつまんでしまうと 左右同時押しになってしまうので 反対側はボタンじゃないところ(透明部分)に手をかけてあげる 必要があります。

ん〜、慣れるまではちょっと使いにくいです。
ボール(乾いた状態) ボールです。これは水を入れる前。 なんかカサカサして回し心地が悪そう。

このボールの中は中空になっていて、 IC カードとおなじ電磁誘導の仕組みで電気が流れるための ループコイルが赤道に沿うように配置されています。
ボール さっきは手が荒れそうなくらいカサカサしていたボール表面ですが、 こうして水を入れると、桃缶の桃のようにみずみずしくなります。 (←当たり前)

実際回し心地はとっても滑らか。ボールを物体が支持しないため、 当たり前ですが摩擦を感じさせない操球感。 運動摩擦-静止摩擦ギャップもないので、周りだしも限りなくスムースです。

さて、水を入れる前にあったボールと筐体上蓋との間の隙間が 無くなっていますが、コレについては後ほど・・。
マーブルマウス 本機のボールは40mmで、Marble Mouseと同じ大きさ。 ということで、交換すればすっぽりはまります。

もっとも、ボールの支持方式もエンコーダも全く違うので 全然動きませんけど・・・(^^;
筐体オープン 早速開けてみます。

本機は筐体上蓋を開けて水を入れる必要があるのですから、 あっさり空いちゃいうな気がしますが、実際のところ ちょっとコツが居る感じです。
ケース上 筐体上側です。

開口部周辺の小さな穴は、空気抜きのためのもので、 ボールが上下するときに、中の空気を逃がす働きをします。
ケース下 筐体下側です。 さすがに中は精密機器なので、 水を進入させないために全く継ぎ目のない構造をしています。

本機を使うときは、 カップ内側に見える線の部分まで水を注ぎます。
ボールを浮かす で、ボールをそこに入れて蓋を閉めて完了です。
ボールアップダウン1 浮力でボールを支持する仕組み故、 ボールはどこにも触れ居ませんし、浮力を得るためボールも軽いので そのままではボールが勝手に動いてしまいどうしようもありません

そこで本機は、ボールを浮力で筐体上蓋に圧着させることで ボールを固定します。
ボールアップダウン2 ボールを回すときは、指の重みが自然にかかるので、 ボールは沈み込み回転のときは上蓋に触れません。

回しているときは摩擦ゼロの ウルトラスムースな操球感、手を離したとたんに しっかりと固定されるという、絶妙なロック機構です。

ただ、どこにも固定していないということは、 どうしても回転中にボールが上蓋にズッてしまうことがあって、 それはちょっと不快なのです。にゅ〜、、残念。
大きさ比較 大きさの比較です。

MS InteliMouseと比べてもすんごい小さいです。 これで「トラックボールはデカい」なんて言わせませんわっ!
大きさ比較(Marble Mouse) 今度は同じボール径のマーブルマウスとの比較です。
やっぱり圧倒的に小さいっ!
大きさ比較(TheBall) これまで40mmボールでは最小を誇っていた The Ball との比較。

The Ball も、 コレまでのトラックボールの常識を破るコンパクトさだったわけですが、 それすら完全に旧世代と言った感じ。
ボールの大きさ ボールとDreamcastのVisualMemoryとの比較です。
パッケージ 文具ルートで流通させることを考えているのか とてもコンパクトなパッケージです。

このパッケージの小ささから当然なのですが、 本機はBluetoothのレシーバは付属しないので要注意です。
グラビア 英TRAXSYS社のInductive Technology を開始地点に、 アイデアにアイデアを紡ぎあわせてカタチを成した本機は、 バーチャルキーボードと同じくSFな未来を感じさせます。 コレを文具メーカーが作ったというのは、ある意味予言的です。

歴史的トラックボールですから、使用・保存・貸出用に 3個は買っちゃいたいところですが、 基本の素性は良い物の、ボタンの押し心地とか ボールの摺る感じとか、 ちょっと時代をジャンプしすぎて着地が安定しなかった感もあるのも事実。 とはいえ、破格のコンパクトサイズと 流体支持という新たな操球感は必触です♪

唯一、本当に残念なのは 本機は水を入れて使わなくっちゃならないので、携帯に則さないということ。 しくしく(TT)、こんなにコンパクトなのに〜・・・。

<総合評価>

繰球の気持ちよさ 回しだしギャップも摩擦感もない新次元の気持ちよさです。
回り出しの滑らかさ 原理上カクンとなることはありません。
回転中の滑らかさ 回転中も非常に滑らか。ただ、手を離すと即座にロックされるので慣性で回すのは無理。
ドラッグのしやすさ 正直かなりやりにくいです。(^^;
対腱鞘炎 コンパクトなので手に負担は掛からなそうですが、ボタンが微妙。
コストパフォーマンス 新技術てんこ盛りなので、ちょっと悪いかしら。でも未来見料だとおもえば納得です。
三猫のおすすめ度 ★★★★
とにかく何もかもが新しいので、一度触ってみることを強くおすすめします。 ただ、実用に即するかというと、決して耐えないわけではないのですがちょっと微妙な面もあるので、その点は要検討です。