マウス個別面談

Logitech First Mouse+ (バルク/前期型 M-S48)

Logitech ST-65UPi
メーカー Logitech (Logicool)
ボタン数 3ボタン
ホイール 1ホイール
エンコーダー 2軸ロータリエンコーダ
トラッキング解像度 400dpi
コネクタ PS/2

誰もが見たことがあるマウス。

IntelliMouseが Microsoftの祖ならば、本機 First Mouse+ は Logitechの祖といえます。

もともとLogigechはOEMマウス市場で広いシェアを持っていましたが、 普通の人は知らないメーカーでもありました。 そんなLogitechが世界No.1のブランド力を築けたのは、 正に本機の力だと思うのです。

エルゴノミック・シンメトリー

本機の素晴らしいのはホールド心地です。 本機は左右対称型のデザインながら 抜群の握り心地を実現しています。

一見ごくごくシンプルに見える本機のボディラインですが、 実はとても微妙な曲線で構成されています。

左右クリックボタンのほんの少しのくぼみや おしりの部分の有機的な曲線は、 目で見たときは本当に有るか無しかの違いでしか有りませんが、 手に持ったときの違いは絶大で 握ったとたんに本機が一流であることを納得させます。 このちょっとした凹凸が、 クリックする指を快適にし、握る手の平に寄り添うように フィットします。

本体を持ち上げやすいように工夫された下に行くほどすぼまる左右グリップや、 底面に張られたとても広い摺動板など、 その「使いやすさ」への考察に妥協はありません。

有機的にグンニャリゆがんだボディを「エルゴ」と称するものは 多いけれど、 ベーシックでシンプルでありながら「使いやすさ」「握りやすさ」に 一部の隙無く配慮された本機をみると、 「エルゴもどき」デザインがとても幼稚に思えます。 エルゴノミクス(人間工学)とは正にこのことなのかと、納得です。

メリハリのあるホイール

First Mouse には前期型と後期型があり、 前期型はリテール()・OEM共に非常に高い品質を誇るのですが、 後期型は内部基盤の簡略化からボール位置をテール側に落としてしまったり、 現行Logitechに続くクリックが比較的柔らかなホイールに交換したりと、 あまり評判が良くありません。

特にホイールに至っては、全くの別物でです。 後期型のホイールもその後のLogitechの標準となるもので 決して悪くはないのですが それでも前期型の濃厚な操作感に比べると 見劣りしてしまう、と猫は思ってしまいます。

前期モデルのホイールは、非常に贅沢な部品構成で作られています。 登場して間もないホイールは「スクロール」はまだ用途の一つに過ぎないという 位置づけで、「ズーム」などに汎用的に使えるデバイス色合いが強かったです。 なので、回転時のクリック感は強めのモノも多く、 本機もご多分に漏れずカキカキといった贅沢なタクタイルを奏でながら回る メカニカリー風味のリッチな感触が魅力です。 特にセンタークリックのバネのサスペンションを味わえるストローク感は 他に類を見ない感触で、何模様が無くても思わず押してみたくなる代物です。 本機のホイールは光学式なのですが、その操作感は電子センサというよりは 機械仕掛けの調整ダイヤルのよう、とてもリッチでな感触で他ではちょっと味わえません。

フィットしすぎるデザイン

本機は浅くホールドするもよし、深く手の平を預けるも良しな、 自由度の高い、それでいて抜群のフィット感を誇るボディです。 特に深く握ったときの違和感のなさと言ったら、 まるであたしの手から型どりしたかのよう。素晴らしい。

でもこのFirst Mouse+ の唯一の弱点が「フィットしすぎる」ことなのです。 このフィットしすぎる形状は負荷を手のひら全体に拡散します。 だから大きな力が掛かっても辛くないですし、 長時間握ったままの形でいても辛くないです。

ただ、手のつらさを効率よく分散し、辛くならないということは 体の各所が限界を超えたことに気が付かないことでもあります。 長時間作業すると小指が中指が固まってしまったり、 マウス経由で腕に体重を掛けてたことに気が付かず 肩に負担が掛かっていたり、 そういう時の危険サインすら分散してしまいます。

これはFirst Mouse+ の責任ではないのですが、 それでも本機の一つの欠点であると猫は思います。

時流と共に

本機の後、マウスに光学化の波が訪れました。 本機のようなロングセラーモデルですら容赦なく世代交代の波が押し寄せました。

でも本機の真の後継は現れませんでした。 First Mouse+ のあとメインストリームを引き継いだ Wheel Mouse Optical も パっと身こそ似ているモノの、 すなおな曲面をしたボディラインに変化を遂げて、 あの絶妙のライン取り――特に手の平に当たるおしりの部分 は影も形も無くなってしまいました。

これはLogitechがデザイン重視に走ったということではありません。 GUIの普及の波をくぐり抜けたマウスのデザイン論の変化により、 変わるべくして変わったモノです。

PCが広く一般のビジネスに使用される機器となり、 マウスの長時間作業による体への負荷が表面化した時代です。 それを受け マウスに手を預け腕ごと振り回す使用法から、 手のひらの付け根を床に設置し手の先の方だけを動かして操作する使用法、 より体に負担を掛けない使用法にいつのまにか主流が取って代わられました。

このころからマウスデザインは「尻すぼまり」から「尻広がり」に変わっていき、 親指と小指の付け根でマウスを「握る」ようなスタイルを 想定したデザインに変わっていきました。それは深く握るのが不快なデザインへの「進化」です。 Logitechも「尻広がり」こそ消極的でしたが、 「ショートテール」と言うキーワードを掲げ「手を乗せない」デザインに移行していったのです。

また、ホイールもその用途が次第にスクロールに一本化され、 軽い回転感と乏しいクリック感がむしろ好まれるようになりました。 長文をスクロールするのにカチカチカチカチとなってしまうのは たしかに邪魔です。

楽園

First Mouse+ は名機です。 ただ、ホイールの有りよう、マウスの有りようの変化から 時代から取り残されていったデザインなのも事実です。

でも、マウスが一番気持ちよかった時代の産物だとも思うのです 手のひら一杯にフィットするなんとも言えない感触や、 ホイール操作の悦楽的タクタイルが失われていく中で、 だからこそ 未だに First Mouse+ のファンは健在なのです。

かく言う猫もそのひとりで、 世の中の流れがどうあれ、あのフィット感、あのホイールのカチカチ感が大好きなのです。

今もFirst Mouse+ を愛用している人って、きっとまだまだ居るのでしょうね。

各部の詳細

表 上から見るとそれほど個性的でもないですが、この奥に微妙勝つ巧妙な曲線が隠されてます。 しっぽの微妙な長さが芸術できなんです。

ちなみにとてもとても使い込んでいるので大変汚くてごめんなさい。
後ろ おしりはこっちから見るとごくごく普通の紅白まんじゅうのよう。
左側面 左側面です。
前半分が指先で本体をグリップするのにとても具合がよい角度になっています。
前 で、その角度というのがコレです。
この逆台形に初めてあったとき、「あったまイイ〜っ」と思いました。 今では当たり前のような持ちやすさの秘訣ですが、 当時これが出来ていたマウスがいくつあったことか・・。

涙が出るほど持ちやすく感じたのが、まるで昨日のよう・・・・。
裏 意外に表情豊かなマウス底面です。エッジを削ったデザインが素敵です。

とても大きな摺動板が特徴ですが、ちょっと大きすぎかしら。 この後のLogitechは小さい摺動板を4〜6箇所くらい貼り付けるのが定番になりました。

理想を言えばもうすこし上にボールがあった方が良かったと思います。 (気になりませんけれど)
しかし、現行品であるコストダウンモデルでは、基盤を小さくするために ボールの位置をこれよりも下げてしまいました。ちょっと酷いです(TT)
ラベル ラベルです。 型番はリテール版は「M-C48」、バルク版は「M-S48」になります。

ちなみに大幅にコストダウン & ボール位置まで変更してしまった 現行リテールモデルの型番はLogicoolのサイトを見ると「SM-33R」、 斉藤サイトさんの写真では「M-CA84RA」になってました。
完璧なおしり 写真で解るでしょうか、おしり部分の微妙な曲線が。 ここの描く微妙なカーブが恐ろしいほど手のひらにフィットするのです。

この絶妙なラインに惚れ込んでしまった人はFirst Mouse+ から離れられないのです。 光学式も「この曲線で光学式がいいんだ」と、 光学化コピー品を確保した人って結構いると思うのです。
ボールをはずす ボールを外すとこんな感じ。結構汚れます。
大きさ比較 大きさ比較、、というよりはライバル比較です。

あぁ、懐かしき90年代よ・・・・、です。
グラビア First Mouseはホントにホントに使い込みました。 後にも先にもこのマウスほど手にフィットするカタチはありません。 メリハリのあるダイヤルに手に吸い付くようなフォルム、 マイクロスイッチの贅沢な感触は今なお一つの頂点を極めています。

ただし、マウスの発展の流れは本機の到達点を過去のモノにしました。 カチカチスクロールよりはスルスルスクロール。手のひらにベッタリフィットするよりは あまり深く握らせないフォルムと、 普通の人が長時間つかうようになったマウスの理想の姿と、First Mouse+の姿は重なりません。

でも、それでも素晴らしいマウスであることには代わりがないのです。

<総合評価>

握りの気持ちよさ 最強のフィット感です。一度握ればどこまでが自分の手のひらだったか解らなくなります。
カーソルの滑らかさ よく作られているボール・ロータリエンコーダなので滑らかです。
本体の質感 Logitechらしい高い質感です。
操作の疲れにくさ 純粋に本機のせいではないですが、無駄な力が入ってしまっても手が苦痛ではないので、肩や肘に被害が出るまで気が付かないという問題はあります。
コストパフォーマンス この品質で普通のお値段だったのだからコストパフォーマンスは高いです。 (特にバルクは。 でも、偽物もすごい多かったのでバルクは危険だったり)
三猫のおすすめ度 ★★★★☆
オススメです。普通に一つは用意しましょう。 ただ、今の時代的観点にそぐわなくなっていると言う点で ☆半分原点です。