キーボード個別面談

DIATEC FILCO FKB91JU

DIATEC FILCO FKB91JU
種類 日本語91キーボード
メーカー DIATEC
キースイッチ メカニカルスイッチ(Cherry MXリニア)
アクチュエータ スプリング
キートップ印刷 シルクスクリーン印字
コネクタ USB

だって日本語なんだもん

CherryのMXリニア キースイッチのキーボードは手に入れなくっちゃって思っていました。

タクタイル大好きな猫ですが、以前CherryのG80-3000LPMEU-0を触ったとき、 このとてもリッチなキー感触に魅了されしまい、 以来、是非一台手元に置きたいな〜、と思い続けてきました。

正直にいってしまえば、実は猫はダイヤテックのキーボードは好きじゃありません。 もともとクリックタイプのメカニカルキーボードに興味はないことと、 エンターキーの右側にキーを詰め込んだキー配置がどうしても猫の性に合いません。

そういう意味では本機のキー配置も大いに不満があるところなのですが、 だってMXリニアでテンキーレスで日本語なんですよ!?

というわけで猫は生まれて初めてキーボードの発売日買いなんてことをしてしまいました。 ・・・うう、不可抗力だわっ。

困惑のMXスイッチ

CherryMXキースイッチは このページを読んでいるような方ならご存じのことだと思いますがかなりこだわったキースイッチです。 (ご存じでない方はQwerters Clinic さんに素晴らしいレポートがありますので、 そちらを是非ごらんください。)

CherryのWebサイトによると 「MX Linear(黒軸)」、「MX Soft Tactile(白軸)」、「MX Click Tactile(青軸)」の3種類の打鍵特性のものが が紹介されています。が、これとは別に「茶軸」なるものもあります。 (「Cwerters Clinicさんの情報によると、「Tactile feel(ergonomic)」というらしい。)

これらスイッチは、それぞれ、

となっていて、 好みに合わせて打鍵特性を選べるようになっているところが マニア心をくすぐります。

DOS/Vmagazine誌でキーボードレビューで このMXスイッチの内、「Linear」、「Soft Tactile」、「Click Tactile」を3つ並べて打ち比べるという なんとも贅沢な経験をさせて頂いた際、 猫が一番気に入ったのが 実は「MX Linear」でした。
クリック感好きの猫としては自分でも意外でしたが、 とにかく魅力的な打鍵感にすっかり当てられてしまったのです。

魅惑のMXリニアアクション

本機を購入してようやく Cherryの MX Linear が自分のものになりましたが、 やっぱりいいにゃ〜♪とご満悦。 店頭で触っているだけではなかなかその魅力は伝わりにくいと思いますが、 実際にPCに繋いで文字入力をしているとしみじみと良さを実感してしまいます。

本機のキーは「リニア」の名の通り、押下距離に応じて押下圧が線形上に増加していくキーボードです。 普通のキーボードのように底打ちやクリック感を目印に押し込もうとすると どこまでも重くなっていくキータッチは、 最初は「ただ重いだけのキーボード」と感じられることでしょう。

しかし本機のキースイッチはそのキーストロークの半分くらいの所にあります。 そのため一番下まで押し込む必要はありません。 いわば残りの半分のストロークは指を優しく止めるダンパーブレーキのようなものです。

このキーをしばらく打っていると、だんだん本機の特性になれてきます。 すると軽くコツコツ、コツコツ、と底に触れるような ちょうど良い力で打てるようになってきます。
こうなったとき本機の打鍵感には、クリック感とは異なる 別の次元の気持ちよさを感じます。

粘りゼロのウルトラスムースなスライド感に、 リノリウムの床をハイヒールで歩くような非常に硬質な底付き感が奏でる鉱物的で透明な打鍵感は、 クリック感すら「ノイズ」として排除してしまったと納得させられる、とてもとても美しいものです

猫はこのキースイッチを叩く度に このままの形で地中から掘り出された結晶なのではないかしら、と思わずにいられません。 それほどに鉱質感・透明感のある打鍵感なのです。

筐体に不満

とはいうもののやっぱり不満はあります。

最大の不満はやはり配列の不満。

「隙間」を極力排除した配列は、 猫には「隙間」の機能性に価値を見いだせない愚かな設計だと思えて仕方がありません。

特にエンター右側の配置は、 今までのFILCOキーボードに比べれば幾分ましなものの、やはりストレスを感じます。。 通常配列と言わないまでも せめてエンターと機能キーの間に「隙間」があれば・・、と思わずには入られません。

また、筐体の作り(品質)にもちょっと疑問があるところです。

全体的に脆弱なのですが、何より大きいのは へんな省スペース指向にとらわれたせいでキーと筐体の間に十分なクリアランスが取れておらず、 最下段キーの一部では キーの押し方によってキートップを筐体が接触する場合があることです。
これではせっかくの超ノイズレスの打鍵感が台無しです。

もうひとつ気になるのが 筐体手前の高さが高すぎる点と、ステップスカルプチャ形状は手前に盛り上がっているけど奥は真っ平らな点。

そのせいでチルトスタンドを立てても奥のキーが遠くに感じますし、 指を伸ばすと手のひらが最下段のキーに触れてしまいうっとおしく感じます。 本機にはパームリストが必須かもしれません。(チェリーウッドのいいパームリスト、どこか作らないかしら(笑))

ここまでいってしまったのですから、 さらに小姑的に気になった点をあげるなら、 スペースバーの打鍵感に若干濁りを感じるところと、 バスパワーのUSBハブで本機を使えない点かしら。

通常キーがウルトラノイズレスな打鍵感のため、 スペースバーを押下するときに感じるスタビライザの「チッ」っというノイズが 目立ってしまうんです。
これは本機に限った話ではなく、Charryのキーボードでもそうなので 特に品質が悪いというわけではないのですが、 打鍵感が打鍵感なだけに目立ってしまうのです。

これだけつらづらと筐体に対する不満を語ってきましたが、 一つだけ大きく評価するのが、日本語キーボードなのに スペースが大きいということです。
やっぱりスペースは「キー」でなくて「バー」じゃなくっちゃとしみじみ。

以上のように 全般的にスイッチに対して筐体の品質がおよんでいないと感じる点も多いです。

また、 本機単体では気づかないレベルなものの筐体の剛性不足のせいか、 Charryのしっかりした筐体に同スイッチが乗せられているものと比較すると、 本機の打鍵感には微妙な「くもり」を感じることを否定出来ません。

文章を奏でるキーボード

使い始めてしばらく立ちますが、 猫はこのリニアスイッチの打鍵感にすっかりぞっこんになってしまいました。

MXリニアのチューニングは絶妙で、「タクタイルまで打ち切る=入力」という デジタル的な入力感ではないキーボードというのはこんなにも気持ちよいものかと ビックリしています。

MXリニアはタクタイルがないので、体がキーの入力までのストロークと重さを覚えるまでは、 なかなか思い通りに入力できないのですが、逆にこれを覚えると嘘のように打ちやすくなります。 こうなったときの打鍵感は格別です。

普通のキーボードだと文章の入力は、1つ1つキー入力を積み重ねていく感覚なのに対し、 このキーボードの場合「文字」と「文字」が分離しない、流れるような入力感が得られます。 文字毎にぶつ切りにならないなめやかな文章入力は、「文章を奏でる」ようとでも言えば良いのでしょうか。 感情や思考がスムースにデータ化されるその感触はハッキリ言って別次元の気持ちよさ。やみつきになります。

こういうと使いこなすのが難しいように感じられると思いますが、 「リニア」は押下特性がわかりやすいので結構簡単に出来るように成ります。
最初はアクの強さから、「猫は好きだけどおすすめするのは躊躇するのよね」と思っていましたが、 それほど慣れるのが大変でなかったこと、そして慣れた時の打鍵感の素晴らしいこと(!)など、 これはなかなかどうして「おすすめ」だわっ。また疲れにくく高速に打鍵できる「実用性」も高く評価したいところです。

CherryのMXキースイッチの素晴らしさ、それを日本語テンキーレスに仕立て上げたパッケージング、 ここまでは文句無しなんですが、 キーを密着させた独特の配列と、悪くはないけどスイッチに見合わない筐体の作りが残念無念。 欠点は大きいのだけど、それを押し切る Cherry MXリニア × 日本語 ×テンキーレス の魅力。

確かにお値段もお手頃とは言えませんし、MXリニアは 現在の「底打ちしないと入力されないキーボード」があふれる市場では異端児で、 店頭で触れただけでは「ただ重いだけのキーボード」と感じられることでしょう。
でもこのキースイッチの本当の魅力は文字を入力してみて初めて解ります。 それは販売的には辛いのでしょうが、猫は本機の魅力を是非いろんな人に知ってもらいたいなと思います。

この先ちゃんとしたテンキーレスでCherryのMXスイッチを使ったキーボードが出ないかぎり、 猫は末永くこのキーボードを愛用していくことになりそうです。

各部の詳細

背面 真っ平らといった印象の背面です。 肉厚をぎりぎりまで切りつめた感が否めません。
ラベル ラベルです。 非常に小さな文字で書かれています。
FCC IDが空欄になっていたり、シリアルナンバが 黒い筐体に透明地の黒文字のシールだったりと、 あんまり読む人のことを考えて無いというか、 とりあえず貼りましたというか。
チルトスタンド 非常に心許ないチルトスタンドです。厚み自体も薄く、 立てたときにパチっと音がするもののグラグラと固定されなかったりします。

本機の場合筐体が重いこと、ステップスカルプチャ形状に問題があり 必ず立てて使いたいことなど、チルトスタンドはしっかりしたモノが付いていて欲しいのですが、 これでは役者不足といったところ。
ステップ・スカルプチャ ステップ・スカルプチャのキートップ 本機はなんだか妙なステップ・スカルプチャで、下だけステップスカルプチャしてるのですが、 上は完全な真っ平らです。

キートップを外して並べれば一目瞭然ですが、上の二段には形状に差異がありません。

筐体の厚みを押さえようという発想なのでしょうが、 上のキーを押そうとすると高くなっていないので届きにくいやら、手前は盛り上がってるので 手のひらに当たって邪魔やらと、ちょっといただけません。
変則配列 本機の最も残念な点がEnterキー横の変則配列です。
最近はノートPCでもEnterの横にキーを配置しないように気を配るようになっているだけに かなり残念に思います。

あと幅を1.5キー分広くすればなんの問題もない配置になるのですが、 その1.5キーを縮めるのことにどうしてそんなにこだわるのか、猫には理解出来ません。
それが出来ないならEnterキーの横に細い区切りをつけてくれるだけでもいいのですが・・・。

変なステップスカルプチャ形状もそうですが、 キータッチをウリにするキーボードで、その打鍵性を失わせるような コンパクト化は本末転倒だと思うのです。
ファンクションキー そして区切りもなにもないファンクションキー部。このキーボードの設計者はきっと ファンクションキーをタッチタイプできない人なのね・・・。
USBハブ 本機の両脇にはUSBポートがあります。

マウスを繋ぐときなどに便利そうなポートですが、 これのせいでファンクションキーにしわ寄せが来ていることを考えると 素直に喜べません。

話は変わりますが、本機の筐体はABS樹脂製なのですが表面が細かい梨地の仕上げになっていて、 ダイキャストのような高級感があります。数あるブラックのキーボードの中でもかなり格好いい仕上げです。
筐体が高い! 本機は以外に筐体手前が厚いです。 機構上厚くなるのはしょうがないのかもしれませんが、 内部板面を斜めに傾けて手前を薄くするとかの配慮がほしいところ。

筐体に余白を残さずすっぱり切り落としてしまっているデザインと 変なスカルプチャ形状と相まってなんだか打ちにくいです。
スペースバー かなり文句たらたらのキー配置デザインの中で 猫が唯一いいな〜、と思ったのがスペースの長さ。 日本語キーボードでもちゃんとバーと呼べる長さがあるのは嬉しいです。

とはいえ、これも「変換」「無変換」キーを多用する人から見ると不満点になるのだから、 キー配置って主観的よね。
キートップを外す キートップを外してみます。 下に見えるはCherryのMXスイッチ、黒軸ですのでリニアタイプです。

メカニカルなキーボードだと、キートップを外しても内部機構が全然見えないので、 解説のネタに困ります(笑)。
キートップを全部外す。 というわけで、キートップを全部外してみます。 うわぁ、MXキースイッチがいっぱい! (あたりまえです)
これだけスイッチがあるなら高くなって当然です。

ちなみにコントローラチップ等の電装はメインキーとファンクションキーの間にあります。 チップ配置は「テンキーレス」の悩みどころなだけに、このアイデアはさすがダイヤテックといったところ。
MX キースイッチ MXリニアアクション。本機の打鍵感を作り出す極楽キースイッチです。

Qwerters Clinicさんの記事によると、自作工具を作れば このままでもキースイッチを分解できるそうです。
スタビライザ スタビライザ部分はスタビライザの受けが非常に凝っていて、 摺動グレードの樹脂が使われています。

キー下の部分は板金なので受け形状が作りにくいのは解るのですが、 キートップ裏も別パーツになっています。
筐体を開ける 筐体を開けます。
ネジ3本で止められているように見えますが、実はプラスチックの爪で しっかり止められていてネジを外してもしっかりと止まったままです。
猫はゴム足をはがしたりしてしばらく隠しネジが無いか探してしまいました。

裏はホントにフタといった感じで、筐体上面にぎっしりつまっています。
パターン 基盤のパターンです。

本機のMXキースイッチは板金に固定するタイプで、固定用ピン一本と端子2つが基盤に固定されています。

MXキースイッチには「ダイレクトPCBマウンティング」と呼ばれる、プリント基板に直接固定するタイプもあり、 そちらは固定用ピンが大1本 小2本、端子が2つにジャンパ線が2つという豪華な(?)構成になります。
邪魔なUSBコネクタ さて、いよいよ本格的に分解です。・・・といったところで筐体上面カバーが外れません。

よく見るとUSBコネクタがひっかがっています。 どうもこのUSBコネクタは組み立ててからハンダ付けされたようで手ハンダっぽいです。

そうなると分解するにはUSBコネクタを外さなくてはいけないわけで・・・。
かなり悩んだ結果、今回の分解はここで終了することに。
板金 とても悔しいので無理矢理隙間をあけて写真撮影。

板金とそれに固定されたキースイッチが見えます。 本機の場合、板金と基盤の間に隙間が空く構造になっています。
手前左側の白いパーツはスタビライザを受けている樹脂で、 板金面にツメで固定されているのが解るでしょうか?
グラビア 今回の分解レポートは非常に中途半端なモノになってしまいました。
メンブレンスイッチのキーボードと違ってメカニカルキーボードは その打鍵の要はスイッチと一体になっています。 ですので単純な分解ではその仕組みから打鍵感を想像するのが難しいです。

さて本機ですが、筐体の作りや配列に問題を感じるものの、 MXリニアキーでテンキーレスキーボードを創ったダイヤテックさんには拍手喝采です。 考えてみればとてもニッチェな製品ですね(笑)
なんのかんのいいつつも猫はこのキーボード、とっても気に入ってしまっています。

とにかく普通の人が普通に(?)買えるリニアがようやく復権したわけです。 良いキーボードが着実に増えていくのはホントいいことですね。(^^

総合評価

キートップの手触り 普通のプラだがちょっと細か目の梨地処理が良い。
打ったぞ感(クリック感) 無し。
省指力 キーは重いけど底まで打ち込む必要がないため実はそれほど力は必要ない。
対腱鞘炎 底打ちによる指への負担は無い。ステップスカルプチャながら奥のキーの高さが足りず指が届きにくい。
コストパフォーマンス お値段は高いです。
三猫のおすすめ度 ★★★★☆(ただし、配列が許せるのなら)