まめ知識

トラックボールFAQ 編

トラックボールにまつわる素朴な疑問を三猫が切ります。好き勝手に。


トラックボールは疲れにくいってホント?

質問:

よくトラックボールはマウスに比べて疲れにくいといわれます。 これは本当でしょうか?

回答:

どちらかといえば疲れにくいようです。

マウスの場合、腕ごと動かすような操作をする場合、 やはりカーソル移動に使うエネルギーがボールを転がすより明らかに大きいため 単純に疲れますし、 そのような場合、マウスの位置が常に肩に負担が掛からない位置(肘が体に接触するようなポディション) にあるとは限らないため姿勢からも疲労や負担が蓄積します。

トラックボールの場合、単純な作業につかう労力の面でも、 ポインタ操作が姿勢に影響を及ぼさない面でも「疲れにくい」デバイスです。

但し、これは「マウスで腕ごと動かすような操作」と比べた場合です。

最近ではマウス操作は手首を机につけ、手先だけで操作する操作法が一般的になりました。 この方法では手先の移動範囲だけでデスクトップの全領域をフォローできる程度の 分解能に調節されている場合、カーソル移動により腕が動くことはありませんし、 手先のみで操作するので、労力的にはトラックボールと遜色がありません。

以上のように、物理的な疲れにくさでは トラックボールの優位性はゆらいでしまいますが、 精神的な疲れにくさでは、事情が異なってきます。

トラックボールはポインタ操作作業自体に快楽性があるため、 「ポインタを動かす」という作業に労力を使うことにストレスを感じにくいです。 また、上記のような「疲れにくいマウス操作」は トラックボールでの操作以上に器用さを要求するため、その面でのストレスもたまり易いです。

精神面での疲れ難さではトラックボールが圧倒的と言えましょう。 (ホイールのあるマウスに慣れた人がホイールの無いマウスを使うと、 「疲れるぅ〜っ」となるのと一緒で、「疲れる感」はぜんぜん違います。)

と、言うわけで、
総じて疲れにくいデバイスと言えそうです。

トラックボールにはホイールの無い機種が多いけど?

質問:

マウスでは、ホイールの無い機種は「生きている化石」状態だけど、 トラックボールにはホイールの無い機種が未だにいっぱいあります。

やっぱりこれらも「生きている化石」で、買わないほうが無難でしょうか?

回答:

ホイールは、あればあったで便利だけれど、無くてもマウスほどは困らないといった所です。

「生きている化石」も確かに多いのですが(^^;、 もともとトラックボールはマウスに比べてホイールの必要度が低いため、 最近の機種の中でもわざと装備していないものもあります。

そもそも、黎明期のマウスに比べトラックボールの操作性は以下の点で圧倒的だったと思われます。

これらに対する対処策が、「カーソルの加速機能」と「スクロールホイール」なわけです。

そもそもトラックボールは、 ウィンドウの端までカーソルを移動させるような大きな移動が楽なため、 スクロールバーに手を伸ばすことにマウスほどのストレスを感じません。
ボールの慣性による天然の「加速機能」のおかげで、 バーのドラックによるスクロール操作のような「大きな入力」と「細かい入力」の両立が必要な場合の 操作性が大変良好ですので、 マウスほどホイールの必要性を感じないというのが正直なところです。

また、多くのトラックボール用マウスウェアでは、 ボール操作でスクロールを行うモードへの切替え機能がサポートされており、 このモードの操作性も大変よい(マウスのホイール操作より、スクロール自体はやりやすい)ので、 ことスクロール操作においてはホイールが無いことはマウスのように致命的ではありません。

但し、ホイールはスクロール操作にのみ使われる訳ではありません

ズーム操作やタブの切替えなど、「コマンドダイヤル」的な操作では、 代替手段がないためホイールが必要と感じます。

スクロール以外の使用法を重視する場合や、 スクロール操作とカーソル操作の「切り替え」が 好ましくない場合は、ホイール付きモデルを選択することをお勧めします。


余談ですが、天然の加速機能をもつボールでのスクロール操作の 操作性・快楽性はホイールのそれを遥かに凌駕します。 この操作性をホイールで再現したのが Microsoftのチルトホイールの加速スクロール機能です。
このことからも、トラックボールが本質的にスクロール操作と愛称の良いことが伺い知れると思います。

[追記]
猫は心の底から「ホイールが無くたって大したことないわ」と思っていますが、 客観的に見ると「マックは1ボタンマウスでも困らない」と主張するのと同レベルのような気もします(^^;

トラックボールを使うのって難しい?

質問:

よくトラックボールって「慣れるまではうまく動かせない」とか言われます。

一方で「トラックボールは操作性が良い。その証拠に障害のある方でも使いこなせる」という話も聞くので、 トラックボールって使うのが難しいのか簡単なのか、 なんだか良く分からなくなってきます。

一体どっちなんですか?

回答:

その質問の答えは、「トラックボール」を「自転車」に置き換えれば分かります。 つまり 習得に労力を要するけど、一度習得してしまえば簡単です。

人間は、生まれて育っていく過程で試行錯誤や反復練習を重ねながら 自分の頭の中にいわゆる「ドライバ」を生成します。 そのため、一度あることが出来るようになると、その手順を細かく考えないでも 同じことが出来るようになるのです。

マウス操作は、人間が育つ過程で必ず習得する「物をつかんで動かす」という 作業に酷似しているため、そのドライバを応用することが出来ます。 結果、特に習得作業をしなくても使えるようになってしまうのです。

反面、トラックボールによる操作は ボールに掛かる慣性を上手くコントロールして ポインタを目的の場所に移動させる、いわばゲームのようなもので、 習得するまではなかなか思い通りの場所にカーソルを移動させることが出来ないわけです。

習得後の操作性については、 トラックボールの特徴として

といったことから、マウスよりは「器用さ」を要求されません。 (前者は「クリック中にカーソルが動いちゃう」ということが無い、 後者は隣のボタンと押し間違えるどの事故が起こりにくく出来る、ということです。)

従って、トラックボールは「努力家のぶきっちょさん」に最適な デバイスと言えるでしょう。


トラックボールは、その器用さを要求されないという性質ため、 利き手以外でも結構簡単に使えるようになってしまいます。

キーボードがその歴史的理由でメインキーの右にテンキーを配置している為、 右利きでも左手でトラックボールを扱う方は多いそうです。

トラックボールと手には「相性」がある?

質問:

トラックボールと手には「相性」があって、 他の人が良いといっている機種でも必ずしも会うとは限らないって聞いたんだけど?

回答:

相性は確かにあります。 一つは「形状に対する相性」で、もう一つは「手の質による相性」です。

形状の相性は、トラックボールに限らずインターフェイス機器にはつき物で、 特にエルゴデザインのもので発生しやすい傾向があります。 こちらの相性は多くの方が心得ているため、大きな問題になりにくいのですが、 もう一つの「手の質による相性」はトラックボールならではの物で、 なかなか事前に気づきにくいものです。

手の質の相性とは、手の体質 ・・・「油っぽい」「カサカサしている」「汗っかき」といった 生まれ持った肌の状態がトラックボールの操作感に大きな影響を及ぼすことです。

トラックボールはボールを直接手でさわるため、汚れの付着は避けえません。 もちろん設計段階からある程度の油脂や汚れの付着を考慮してはいるんでしょうが、 なにぶん個体差が大きいため、同じトラックボールでも操作者が違うとまったく違う操作感に なってしまうことがあるのです。

具体的には、乾いた手の方の場合ボール上の油膜を手が拭いさってしまうため、 ボールの回転が信じられないほど重くなってしまうケース、 汗かきの手の方の場合、かいた汗がボールに付着しそこに空気中の埃が取り込まれるため、 ローラーや支持球に汚れがこびり付き、滑らかな操作を阻害するなどの 症状が発生します。

逆に適度に脂性の手の方の場合、その人がしばらく使っただけで トラックボールの状態が良くなってしまうなどと、良い効果を発揮することもあるそうです。


ボールのすべりが悪くなったら鼻の頭の脂をつけると良い、という話を良く聞きます。

一見汚らしい話に聞こえますが 人の鼻の脂は実は潤滑・汚れとりに効果的であることが昔から知られています。 (あるレンズメーカでは、比較的近年までレンズのカビとり剤として鼻の脂を使っていたそうです)

なんといっても人体に無害(当たり前です)、 落としたければ石鹸で洗えばよいのでメンテナンス製(?)にも優れ、 トラックボールの樹脂部材も侵さない、 もちろん潤滑効果も抜群で、入手も容易と、 トラックボールの潤滑剤として一考の余地のある優れもの。 「私が使うとボールが直ぐに滑らなくなる(TT)」とお嘆きの方は試してみる価値はありそうです。

といっても、やはり「気分の問題」(自分・他人の両方で)も大きいのですし、 試される場合はあくまで自己責任で・・・。(^^;

[鼻脂リンク]

金属支持球は削れるので駄目?

質問:

Microsoft Trackball Explorerのような ステンレス支持球のトラックボールは、 支持球が摩耗してしまうので良くないと聞きました。

本当に削れてしまうのですか? また、これは欠陥品なのですか?

回答:

いわゆるフラットスポット問題です。

物と物が擦れあうと、柔らかい方から削れていきます。 こういう摺るところには「摺動耐性」のある部材を使います。 で、くだんのステンレス支持球は もちろんただのステンレスではなく摺動耐性の高いステンレスを使っているハズです。

じゃあ大丈夫なのかというと、実際の所はやっぱり駄目で アルミナセラミックや人工ルビーの支持球に比べてしまうと、 かなり寿命が短いと言わざるを得ません。 現実問題としても、支持球が操球感に影響を及ぼすほど削れたと言う話は良く聞きます。

どのくらいで駄目になるのか

そんなわけで、ステンレス支持球だと削れてしまうことは間違いないですが、 「どれくらいの期間で耐えられないくらい削れてしまうか」については諸説紛々で、 ハッキリしません。

約3ヶ月〜半年というもっともらしい説 (無難さから猫のトラックボールでは採用してます。根拠はない・・^^;)から、 2年は持つという力強い意見、 おそらくボールが軽くて、美味しい期間は一週間も無いのではないだろうか という衝撃の考察 (トラックボール自由研究さんの考察) などなど。振れ幅が大きすぎて正直なんとも。

仮に2年も持つのならそれは十分な寿命だと言えますし、 1週間で駄目駄目なら欠陥品といっても差し支えないかも。 ここが肝心な所なのですが、何とも歯切れが悪くてごめんなさい。

ただ、市場の反応を見る限りでは、 現実的には酷く短い期間で使えなくなることは無いようで、 欠陥品と言い切るには少し苦しいなぁと言ったところ。 例えば、猫の環境では Trackball Explorer を1年以上使ってますが、 使うのが苦痛という状態にはなってないです。

なぜこんなに「駄目になるまでの期間」に差があるのかというと、 一つは環境によって削れ方が変わってくるだろうと言うこと。 手の油脂がよくまわっているか、 どれくらいの重さが支持球に掛かってくるか、 砂埃が多い環境か(石英によるクレンザー効果)など、 純粋に削れ方が環境により変わってくるということが有ると思います。

これらも大きな要因ですが、 もう一つ大きいのが、これが至って感覚的な問題であるということです。 どのくらい削れれば 「重くてつかいにくくなった」と感じるかは主観に強く依存します。

あるとき、ふと「このボール重くないか?」と気が付く日が来るという感じだろうか。

という トラックボール自由研究さんの考察は、 酷く的を射ていると思います。 毎日少しづつ重くなっていくような変化には、人間なかなか気が付きません。 皮肉にもフラットスポット問題を知ったことが 引き金になってしまうことも多いみたいで、知らない方が幸せ というのはあながち嘘じゃないかなぁ、とか思ったり。(^^;

この問題については、トラックボール自由研究さんの

に実験を伴う詳細な考察があります。 ぜひぜひご参照ください。

ステンレス支持球だと“絶対”駄目か

また、ステンレス支持球は、アルミナセラミック等にくらべ 若干おもいながらも粘るような操球感となり、ここに好みの介在する余地があること、 金属なので割れにくいというメリットがあることなどがあり、 耐久性とのトレードオフに納得のいくケースも有り、かしら。

結構大きめのボールを持つトラックボールなら気にしたいところですが、 ハンディ機程度なら、はっきり言ってどっちでもいいです。

アルミナセラミック支持球とステンレス支持球 どちらでも良いのなら、セラミック支持球のモデルをお薦めしますが、 それよりも優先される物があるなら、ステンレス支持球のトラックボールを 選んでも別にいいんじゃないかな、と思います。