メーカー | 創朋 (製造元:3G Green Green Globe) |
ボタン数 | 3ボタン |
ホイール | なし |
エンコーダー | ゴム巻きシャフト式 |
ボール支持 | スチール小球による3点支持 |
ボール径 | 19mm |
コネクタ | PS/2・USB |
このトラックボールを初めて見たのは、一体いつのことでしょうか? 秋葉原を散策することを趣味としている人なら、必ず見かけたことがあるはずです。
「ハンディトラックボール」と言われて 多くの人が頭に思い描いてしまうほどメジャーな 本機ですが、ある時はバルク投げ売りで、ある時は「ごろ寝マウス」と銘打ってパッケージ売りしていたりと、 メジャーな割には素性がハッキリしていない本機です。
名前は言えないけれどモノをみれば「ああ、コレコレ」な、変な知名度の本機ですが、 とにかく有名なことには変わりはない。 ハンディ機を語るのなら、本機を取り上げなければ嘘ですので、 今回の個別面談は 使えてマウス! なのです。
猫が本機を一番最初に見かけたのは多分1999年〜2000年の間で、 (そのときは当然ながらPS/2接続onlyだったのですが) いささか設計が古いのは否めませんが、 「名機は長生き」の格言通り、今でも十分通用するハンディトラックボールです。
本機を名機たらしめる魅力は、十二分にコンパクトなボディに対して大きなボールと、 そのボールによってもたらされる悦楽的操作感です。
直径19mmのボールはハンディ機としては大玉で、このサイズはそれ以下のサイズのボールの操作性と一線を画します。 また、(絶対的にみての)小球にありがちなボールの跳ねが最小限に抑えられ、この点も操作性の良さに貢献しています。 ボールの回転がとても安定しているのは、 大玉であることとは他に 本機のボール受けの造りが良いこともあるようで、 この安定感のおかげで ハンディ機ながらボールの慣性を生かした操作が可能です。
なにより、この安定した大玉を 親指の先や関節、根本側も含めた親指全体の指の腹でコロコロするときの気持ちよさは特筆もので、 トラックボール特有の悦楽的繰球感を十二分に味わうことが出来ます。 これは、「プラスαは二の次で、とりあえず実用的な操作を・・」が許されるハンディ機には珍しいことです。
素晴らしい繰球感を誇る本機ですが、これは本機のボディデザイン(ボールのポディションや手のひらの自由度)も 大きく貢献しています。反面、このボディデザインは繰球以外のファクターで評価するとき、 決して「優秀」と評価されるものでは無いのも事実です。
本機は3ボタン式トラックボールですが、左クリックが 指輪のようなリングのちょうどトリガー部に 割り当てられているため、ドラッグに困ることはありません。 これはハンディ機が実用的操作性を得るためには必要最低限のスペックです。
しかし、そのクリックは若干重く、(これだけが原因ではないのですが)トリガを入力する際に本体ごと動いてしまいがちで若干操作しにくく感じます。 このクリックの固さはトリガがグリップも兼ねている(人差し指と中指で本体をホールドする構造)の為のようで、 「ホールドも兼ねる」ということも、クリック自体の操作性を損ねています。
本体上面にはセンタークリックボタンと右クリックボタンがあります。
パッケージによっては「上面左ボタンを押すとスクロールモードに・・・」と書かれることもあるようですが、 これはセンタークリックによるWindowsでのデフォルト動作「ユニバーサル・スクロール」を差していて、 ハード的/ソフト的にも ボールでホイールをエミュレートする機能があるわけではありません。 本機のスクロール事情は3ボタンマウスと同等です。
右クリックボタンは本体上面左に配置されていて、 その配置故に右ドラッグは絶望的なのが残念なところ。
このように本機のボタンデザインは「必要最低限」こそ満たしているものの、 ホイールマウスが当たり前になった昨今では、ちょっと難ありかしら? と思わせるのも事実です。 ボタン類の実用的配置という面では、オプティマ(旧 東京ニーズ)のNTB-800に 何歩も譲ってしまいます。欠点とまでいかないものの、本機最大の弱点です。
本機に対してもう一つ苦言を申すなら、ホールド性が微妙であることも上げられます。
本機は中指で筐体下側の出っ張りを引っかけるようにホールドするのですが、 繰球時はともかく、前述のようにトリガを入力する際にはちょっと不安定に感じます。 トリガボタンが重いこともそう感じさせる一因ですが、根本的にはホールド感に乏しいことが原因です。
でもこれの改善は、手の自由度を奪い繰球の悦楽性を減じてしまうことに成ってしまうかもしれないので、 微妙ですね。
本機の魅力は、ハンディ機としての目的を違えないコンパクトサイズながら、
大玉トラックボール特有の悦楽的繰球感を体感できる一点に尽きます。
このチャームポイントは ハンディトラックボールとして正に
単に実用的というならば、他にも結構選択肢があるのがハンディトラックボールです。 猫自身の使用状況はというと、実用性の面で手堅い NTB-800 と、 繰球の気持ちよさが圧倒的な本機の半々といったところ。
正直、双方のメリットがフュージョンした トラックボールが欲しくなってくるのですが、 本機にはこのまま変わらないで居て欲しいと思うのも事実です。 変更することでこの「バランス」が崩れてしまうくらいなら、ずっとこのままでいて欲しい。猫はそう思ってしまいます。
ですから、猫は本機をこれからもずっと販売し続けてほしいですし、現実にもそうなることは堅いのではないでしょうか。 名機は長生きです。
非常にシンプルなデザインです。 本機は手前側にボール、奥側にボタンを配置していますが、 そのおかげで指先だけでなく指の腹全体でボールを操作できる絶妙のポディションとなっています。 またボールの下側に何もない為、手のひらごと親指を動かすことが出来、 これも繰球感の向上に一役買っているようです。(反面グリップに乏しいのも事実です。) ボール上のボタンは、左がセンタークリックボタン、右が右クリックボタンとなっています。 そのため、右ドラッグには厳しいものがあります。 |
|
手前から。 グリップが張り出さない構造のため、こちらもシンプル。 側面に見えるギザギザは人差し指の横でホールドする際の滑り止めです。 |
|
左側面です。 接合線を見ると意外に複雑なパーツ分割をしていることが解ります。 お尻部分の出っ張りを中指(または薬指)で握るようにしてホールドします。 結構あちこちに滑り止めのギザギザがあるのですが、 形状的なとっかかりに乏しい本機ですので、いまいちなグリップ感です。 |
|
奥です。 ケーブルが奥から出ているのですが、この重みと前側に長い本体形状から トリガに通した人差し指を軸にグルっと回ってしまいそうな感触を受けます。 |
|
背面です。 滑り止めのギザギザが視覚的にうるさいせいか、こちらは上面ほどシンプルな印象をうけません。 ちなみに本体には 創朋での型番「3DUSB/PS2/OFF-TABLE-W」はどこにも刻まれていません。 (末尾の -W は本体色:白を表します。ブラックボディは -Bになります) |
|
ラベルには Model No.として、「FDM-G60 P」、メーカ名「3G Green Green Globe Co., Ltd.」が
見受けられます この3G Green Green Globe社が本機の開発元で、 そこでの型番(プロダクトNo.)は04.M1S3OCC101(単に M1S3OCC101 ?)となるみたいです。 ちなみにこの「ハンディトラックボール」(3Gでは「Hand Track mouse」)というジャンルは この会社が開拓したとのことです。 |
|
指がかりのない乏しい形状だけに、滑り止めに気を遣っている本機です。 本体両脇には人差し指のかかるギザギザだけでなく、 幅広のトリガー自身も滑り止めが刻まれ、固めのボタン設定と相まって指がかりとして機能します。 ちょっとよくわからないのがリングケーブル側下の滑り止めで、 ここは中指をかけるホールディングもあり、ということでしょうか? |
|
ボール受けです。非常にしっかりした成形で綺麗なカップが成形されています。 見ての通りボールの支持は金属小球3点支持で、エンコーダは ゴム巻きシャフト式の物理エンコーダです。 |
|
これがハズされたボールと蓋。蓋の成形もピシッとしてます。 | |
筐体を止めるネジはラベル下の一本だけです。 | |
筐体の一番トップ側を外します。 意外なことにボール受けのユニットは基板上になく、 非常にしっかりしています。 ちなみにマウスケーブルはぐるっとトリガリング下側を回って出るわけです。 |
|
というわけで、ボール支持球とゴム付きシャフト(と羽根車)自体は 筐体上面にくっついています。 | |
裏から見たところ。 筐体に固定された羽根が 基板上のダイオードと光学センサの間にすっぽり収まる様は、 「精度いいのね〜」と感心です。 なんというか、無駄のなく整然とした綺麗な設計ですね。 |
|
さらにトリガリングを外します。ほとんどスカスカです(笑) 下の別基板に付いているタクトスイッチがトリガ用のスイッチです。 |
|
トリガリングです。 このリング上のデザインは、結構コスト高となりそうなのですが、 こだわりですね。 トリガの出っ張りは結構大きく、これ自体が指がかりとなることもあって、 トリガ天面は緩やかなカーブを描いているのが見て取れると思います。 |
|
トリガを裏から。
S字状に伸びた足がスプリングになっています。 見ての通り、トリガ、かなり大きいです。 |
|
記念に3ピース♪ | |
本機の基盤は、メインとトリガの2枚です。 |
|
メイン基板です。 この手の内部スペースに乏しい器機は基板にしわ寄せが来ることが多いのですが、 とてもシンプルでオーソドックスな形状です。 しみじみこのトラックボールは、設計が上手よね。 |
|
綺麗にユニット化された発光部とセンサ部。
真ん中のスリットにゴム付きシャフトについた羽根車がピタリとはまります。 外からの光でセンサが邪魔されるのを防止するためと思われるカバーは 意外に他の器機では見ることが少ないです。 そこに本機の品質へのこだわりを感じさせます。 |
|
メイン基板を裏から。 コントローラチップが目立つだけで、あとは至ってシンプルです。 |
|
コントローラチップです。 なぜだかチップの表面が荒れていて、非常に読みとりにくいのですが、「ALH100MUP 2007」「2A11GQC 524F」という風に読めます。 (MUP とGQCのあたりはかなり怪しいですが・・・(^^;) ) |
|
トリガースイッチの基板はこんな感じで固定されてます。 | |
MS InteliMouseとの比較です。 さすがにハンディ機の中でもコンパクトな部類に入る本機、圧倒的に小さいです。 |
|
ボールとDreamcastのVisualMemoryと本機のボール、そしてArvel フリーマウスミニ コンビのボールとの比較です。
本機のボールは直径19mm、Arvelのは16mm(これはオプティマ(旧 東京ニーズ)のNTB-800のボールと同サイズ)です。 こうしてみるとドングリの背比べの用ですが、 この3mmの差は繰球感に大きな差を生み出します。 |
|
今一歩、グリップ面から実用性に難を感じてしまう本機ですが、
こうして使ってみるとデザインに非常に洗練されたモノを感じるのも確かで、
小手先の改良はかえって本機の良さをスポイルしてしまうのではと感じます。
確かにワイヤレス版のように下にグリップをつければ
安定性の不安は改善されますが、「何か違う」と思ってしまいます。 ハンディトラックボールの選択肢が広い今、あえて最古残の本機を選ぶ理由は、 繰球の気持ちよさとバランスの良い洗練されたデザインにあるのよね、とそう思うのです。 |
繰球の気持ちよさ | ハンディ機のくせに生意気なっ!というくらい気持ちよいです。 |
回り出しの滑らかさ | こちらもとても良好です。 |
回転中の滑らかさ | 上に同じく良好です。 |
ドラッグのしやすさ | 左ドラッグについては若干やりづらさを感じるけれど慣れの範疇。右ドラッグは絶望的です。 |
対腱鞘炎 | どうなんでしょう? 特に手に負担を掛けるようなことはありませんが・・・。 |
コストパフォーマンス | 本機自身の値段設定がハンディ機の基準のようなところがあるので難しいです。従って高いとは思いませんが、安いともおもいません。 |
三猫のおすすめ度 | ★★★☆ |
実用性の今一歩感 (ことは足りるのだけれど、据置デバイスの完全な置き換えはちょっとね・・感)と、繰球の悦楽性のせめぎ合いでのこの評価。 正直微妙な配点になりましたが、猫は本機がとても好きです。 |