トラックボール個別面談

macally QBALL (optical trackball for mac)

Microsoft Trackball Explorer
メーカー macally
(Mace Group)
ボタン数 5ボタン
ホイール 1ホイール
エンコーダー 光学式
ボール支持 ステンレスベアリング・ローラによる3点支持
ボール径 38mm
コネクタ USB

Expert Mouse ユーザの夢

Expert Mouseユーザは夢見ます。

Expert Mouse 7 で念願の光学化を果たしたExpert Mouse ですが、 それと引き替えに ステンレスベアリング・ローラのスムースかつ重厚なゴロゴロとした操作感を 失ってしまいました。

もちろん小球の3点支持の異様なまでのなめやかさは、 それだけの価値があるのですが、 やはりExpert Mouse ファンは あまりに今までと違う操作感触に 光学式エンコーダを装備しつつボール支持のためだけに ステンレスベアリング・ローラを使ったトラックボールを願ってしまうのです。

そんな夢のようなトラックボールが実はあったりしてビックリ、・・・というのが本機です。

ベアリングローラ支持の光学式トラックボール

というわけで、光学式エンコーダとステンレス・ベアリング・ローラを兼ねそろえた macally QBALL、 手に取ってみると想像以上に小型でコンパクト、Microsoft Trackball Explorerなみの 大きさを想像していただけに、ここでもビックリ。 ボールもわずか38mmしかないので、ちょっと不安になります。(Orbitだって40mmです。)

しかし、ボールをコロがしてみるとそんな不安は氷塊。 Expert Mouseでおなじみの官能的なゴロゴロ感が指先に伝わってきます。 さすがにボールのサイズが全然違うので重厚さまで同じとはいきませんが、 う〜ん、このサイズのボールでもこの感触が味わえるとは素晴らしい・・。

Expert Mouseと同じ眷属なのねと実感するのは、 動摩擦と静摩擦のギャップのなさによる滑り出しの滑らかさや、 ボールの物理的な質量・大きさを実感できる「転がし感」。 (点支持の光学式はスーッと「滑らす」感覚ですが、こちらはゴロンゴロンと「転がす」感覚が強いんです。)

さすがステンレスベアリングだわ、と納得のいく仕上がりですが、 Expert Mouseを隣に並べて比べてしまうと重厚さやそれに起因する気持ちよさに欠けるのは 仕方のないところ。でもコレもいいもんです。

ただ、一つ大きく感じる違和感に、軽すぎるボールの滑り出しがあります。

本機のボールはExpret Mouseに比べ小さく軽いのに、 ステンレス・ベアリング・ローラの滑り出しのスムースさが得られるため、 ちょっと触るだけでボールが回転しだしてしまいます。 そのため、細かい操作が非常にしやすい反面、ふと触れてしまった際 意図せずカーソルが動いてしまう「敏感さ」があるのです。 この一点だけはちょっと気になります。

支持機構はかなりご満悦の本機ですが、 一方の光学センサをつかったエンコーダですが、こちらもおおむね問題の無い感じで、 細かい操作もよく拾ってくれます。 ただ、ガーッと勢いよくボールを転がすと、エンコーダが拾いきれなかったりっするときがあります。 ここはちょっと残念なところですが、実使用上ではおおむね問題の無い感じです。

ハイエンドな繰球感は、大玉の専売特許だと思っていましたが 小球でありながら本機の繰球感ハイエンドの部類に入ります。 それはなかなか嬉しいものです。

さて、本機のボールが小さい理由は「コスト」ではなく、 筐体のコンパクトさのための様です。

本機はコンパクト・ハイエンド とでも言ったらよいのでしょうか、 高品位製品なのに非常にコンパクトです。

筐体はしっかり詰まった感じがし、 各ボタンもメリハリのあるクリック感があり 品質の良さを伺わせます。 特にカチッ、カチッ、と金属質でメリハリのあるクリックを刻むホイールは、 なんだかメカニカルキーボードのようなリッチな感触で嬉しくなります。

すっぽりと手の中に収まる感触と、その中で主張する密な存在感は、 とても良いものです。 精密機器を思わせる引き締まったトラックボールです。

for mac?

本機で気をつけなくてはならないのがMac専用ということです。 ただ、USB接続ですし、猫の環境ではWindows(2K,XP)でも標準ドライバでも動かすことはできます。

左クリックが左上、右クリックが右上に降られているので、カスタマイズしなくても 猫はそれほどストレスを感じませんが、 Windows用のドライバ・ユーティリティが用意されていないので、 まったくカスタマイズできないのはちょっと残念。

できればWindows用のサポートをして、普通に流通して欲しいのだけれど・・・と、猫は思っていたのですが、 実はこのQBALL、Windows版がpcallyブランドで 販売されているとのこと。

もちろんこの pcally版 QBALLはWindows用ドライバが付属してくるのですが、 猫が試した限りではmacally版QBALLでも問題もなく使えました。 日本ではmacallyブランドでしか発売されていないQBALLもWindows向けにフルスペック(?)で 使えるわけです。

このドライバ、常駐ユーティリティタイプで、 ボタンのカスタマイズやボールやダブルクリックの速度を調節できるもの。 ごくごく一般的な設定項目しかないのでフリーのマウスユーティリティでも十分な気もしますが、 純正ドライバが使えるというのは嬉しいものです。

このドライバ(というかユーティティですね)は、 pcallyのサイトでダウンロードできます。 もちろんドライバが英語になっちゃっても構わなければですが、 うーん、奥が深いわ。

コンパクト・ハイエンドなトラックボール

ステンレス・ベアリング・ローラ支持がウルトラスムースといっても 回転中のスムースさは小球3点支持の光学式トラックボールには適いません。 そのため「大玉」でないために、このローラの感触を「第一印象」で気持ちよいと感じるかは微妙です。

ですが、しばらく使っているうちに、回りだしの滑らかさや、 ベアリングの回転がもたらすゴロゴロとした快楽に、きっと納得がいくはずです。(クセになります)

コンパクトでしっかりした筐体の作りにも高級感を感じさせます。 直販で5,400円というお値段も信じられないものがあります。(というか、原価割れしてません?) これは「買い」のトラックボールでしょう。

それにしても、本機の操作感はボールの小ささを感じさせませんね。 ベアリング・ローラはこの小球に小球と思えない繰球感と操作性をもたらしています。

まさに逸品。このQBALL、猫はすっかり気に入ってしまいました。

各部の詳細

表 製品写真で想像するより小柄で、細長い筐体です。

細い筐体がマウスのような手の中にすっぽり収まる感じで 新鮮な感じがします。 本機はこの「マウスのようなコンパクトな握り心地」が先にありきで、 そこから設計を煮詰めていったような感がするのです。

表面仕上げもシルバー塗装の上からグロスクリアを圧吹きした美しいものです。
それにしてもデザインラインが 士郎マウスを連想させます(笑)
後ろ 手前からみると、非常に生物っぽい感じです。

右方向への傾斜があまり強くないので握ってもそれほどあまり押しつけがましい感じを受けません。

パームレフトに尖った感じがあり、手のひらをべったり固定しない感じで、 おかげで手全体で操作するのを誘発する、気持ちよい形状です。
右側面 外側につけられた別パーツのようなデザイン処理をされたボタンが目を引く左側面です。

左側面 親指操作ボタンは非常に練られた構成になっていて、 とても使いやすいです。

上下ではなく前後に分割されたボタンや、適度に傾けられたホイールが操作しやすく、 MS Trackball Explorerと比べると 「よく考えてあるわ〜」と感心です。
前 ボール回りのデザインが目立ちます。

本機のボールは38mmとどちらかといえば小さい範疇にに入るのですが、 ギョロっと飛び出したボールはその小ささを感じさせません。
裏 エルゴな人差し指トラックボールはきまって足の裏のよう。
MS Trackball Explorerが大人の靴なら本機は子供靴といったところです。

ちなみに、筐体上面はシルバー塗装の上からクリアの光沢塗装をした贅沢な塗装法ですが、 底側はさすがに単にシルバーを吹いただけになっています。
ラベル ラベルです。
ラベルも丸くデザインされているところが可愛らしいです。

本機の名称として知れ渡っている「QBALL」ですが、 実はParts No.で、 このラベルにもパッケージにも製品名は「USB Optical Trackball」と記されています。

ちなみに写真はゴム足をはがした状態です。
右側ボタン 薬指、小指で操作するボタンはボールの外周を囲うラインと一体化されたデザイン的に面白いです。

デフォルトで薬指ボタンが右クリックに降られているのは ドライバのないWindowsで使用する身にはとてもありがたい配慮です。
小指ボタンは「進む」です。
右側ボタンを押す ボタンの入力方向は「押し下げ」で、親指側が「握る様に」押し込むのに対して 「アレッ?」とおもったのですが、意外にすぐ慣れます。
左側ボタン 親指先の先端とお尻でシーソーのように押し分けられるのが心地よいボタン。 先端がクリックで、お尻が戻るボタンになります。
非常にかっきりした感触の良いボタンで、高級感があります。

またホイールも向きも回しやすく、近年にない金属質な「カチカチカチ」とした ホイール時クリックもとても高級感があり素晴らしい感触です。

残念なのがホイールクリックの感触で、ここだけタクトスイッチを使っているため、 感触が劣ります。うーん、惜しい。
ボールを外す ボールを外します。

軽くホールドされているだけなのでボールをつまんでちょっと上に持ち上げれば ボールが外れます。
ボール受け ボールを外すととても小降りのステンレスベアリング・ローラが顔をのぞかせます。

Expert Mouseのような巨大なのが付いていると思っていただけに拍子抜けですが、 考えてみればエンコーダを兼ねないのでこのサイズで十分なんですね。 エンコーダを兼ねないといえば、XY軸検出をしなくて良いので 純粋に3方向に均等配置されています。

光学センサが底面についているのですが、ゴミが入らないかちょっと心配です。
ステンレスベアリングローラ ステンレスベアリングです。「シャーッ」という独特の転がり心地と滑らかな転がりだしは コロの原理で静摩擦を回避するベアリングならでは。

小球による点支持には無い魅力があります。

ただ、ボールが軽いため転がりだしが軽すぎるように思える時も(^^;
隠しネジ 隠しネジは二つ。 ラベル近くのゴム足の下にあります。
筐体オープン 筐体オープン。

非常にぎっしり詰まった感じがします。内部のつまり方も ハイエンド・マウスのような感じで、この充足感が高級感につながっているのでしょうか。
ボール近辺 ボールユニット周辺はなんだかごっちゃりしているように見えるのですが、 本機は非常に綺麗にユニット化されていて、設計の妙に唸らせられます。

それにしても筐体スペースの限界まで大型なボールを採用したのが 一目でわかります。
ボールユニット ボール受けは筐体上面に乗せてあるだけのような感じで簡単にはずせます。 エンコーダと一体になっていないのでとても分解しやすい綺麗な設計です。 ボール受けはツルツルとして若干弾力性のある樹脂でハメ合わせ精度や耐久性を出している感じ。

ボール受け下側には光学式マウスでよく見るユニットが鎮座しています。
基盤のみ ボール受けやボタントップをはずした、基盤だけの状態です。

基盤はメインと、光学式エンコーダ基盤と親指側ボタンユニットの3枚のみで、 それぞれが綺麗にまとめられています。
筐体内部の部品固定にネジが一本も使われていないため、スナップフィットのプラモデルのように すいすいと組み立てられます。うーん、無駄が無くて美しい、なんとも日本人好みの内部構造です。
左ボタン側 親指側のボタンユニットです。

左側ボタントップ・表 左側ボタントップ・裏 端を溝にはめ込むだけのシンプルな固定法なので、ボタントップは簡単にはずせます。

真ん中が沈むような使いやすい構成もさるものながら、 親指お尻側ボタンのヘリにでっばりがあってボタン境界を触知できるようにしている点など とても使いやすいボタンデザインです。
左ボタンユニットの取り付け 親指側ボタンユニット自身も基盤とホイールを固定するプラスチック板の端を 筐体の溝にはめ込むだけのシンプルな固定法です。
左ボタンユニット ホイールと、マイクロスイッチ等を実装した基盤が一つのユニットにまとめられています。

マイクロスイッチは KensingtonのOrbit Eliteとおなじもの様です。
ホイール ホイールはホイール自体で回転時のカチカチ感を発生させる構造。

Logitechの初期型 FirstMouse + のような方向性の非常にハッキリした クリック感は本機のもつ そこはかとない精密器機のような雰囲気と相まって、 高級感があります。
ホイールの下 ホイールの下側です。

写真右手に見えるのが回転を検出するエンコーダで、 左手に見えるのがセンタークリックとなるタクトスイッチです。

他のボタン類が非常に高品位な押し心地なので、タクトスイッチなセンタークリックの感触が 悪いモノに感じてしまいます。スペースの都合なのでしょうが、残念。
右ボタン内部 右側のボタンは左側とちがい、内部に軸をもった固定法です。
軸とボタントップが離れているため、 ボタンをクリックすると外壁を滑り降りるようにクリックされる独特の感覚があります。
右ボタンスイッチ ボタンの下には親指側と同じマイクロスイッチが見えます。
右側ボタントップ・表 右側ボタントップ・裏 こちらのボタンは、筐体に対してプラスチックの弾力を利用してはめ込む感じです。 一度組んでも分解が容易で、とても精度の高い設計をしているのねと感心させられます。
筐体下面とメイン基盤 以上を取り外し、メイン基盤と光学センサのみにとなった筐体下面。

メイン基盤 メインのプリント基板です。
コントローラーチップ コントローラチップです。
光学式エンコーダ 光学センサユニットです。 マウスなどでよく見るタイプのようです。

やはり光学部品だけに精度が必要なのか 他は安価な紙フェノール基盤を使用しているのに、 ここだけガラスエポキシ基盤です。
光学式エンコーダ 裏 よーくみる、一体型チップです。
光学式エンコーダ 固定法 コンパクトな設計の極みですが、光学センサチップの肉厚を逃がすため、 筐体下面にはチップの大きさの穴が開いています。

そこはちょうど製品ラベルの貼られる場所で、 しかもそのラベルで光学センサが揺れ動かないように固定するという 一石二鳥ぶり。

本機の設計の妙をひしひしと感じられる部位です。
筐体下側 と、いうわけで、ようやく裸になった筐体下面でした。

今回の分解で思ったのは、マウスとかトラックボールとかで一般的な 内部にゆとりがあったりカオティックだったりする設計とは一線を画する とても綺麗な空間配置をしているな、ということです。

精密機器のような計算されたレイアウトはとても共感を覚えます。 なんだか、「あたし、脱いでも凄いんです」なトラックボールだわっ。
ボールの模様 ボールは一見昔のキラキラスーパーボールのようで、 きらきら光る小さなかけらが内部に封入されています。これでボールの移動を検知するのね。

ちょっと高級感にかけるような気もしますが、センサ兼ライトアップが綺麗に生える 仕上がりはなかなか。
ライトアップ 乳白色のボールをセンサーの赤色LED光が拡散し、ボール全体が赤い色に染まります。

猫の写真はZライトを光源としてるため、赤っぽさが相殺されてしまって、 見事な染まり方が伝わってこないのですが、メーカのページに紹介されている写真のような色になります。

命が入ると色が変わるボールというのはなかなか粋です♪
大きさ比較 マウスと比べると遜色のない細さを保つ本機、長さはトラックボールですので パームレフト分だけひょろっとある感じがありますが、 本機をもってトラックボールを「マウスのほうが小さいじゃない」とは言わせない説得力をもちます。

質感の高さも相まって、非常に「これでマウスと対等に戦える」と思わせる仕上がりです。
ボールの大きさ ボールとDreamcastのVisualMemoryとの比較です。

38mmはちょっと小さいのです。
ボールの大きさ DCのVMとの比較じゃあまりよくわからなかったので、 40mmボールと比較します。

数字の上では2mmしか変わりませんが、並べてみると結構ちがいますね。
グラビア 本機はコンパクト・ハイエンドなトラックボールです。

質感はExpert Mouseすら越えるものがあり、デザインも非常に良く練られた面があります。 しかしなんと言っても本機の魅力はボールの回転、ボタンのクリック、ホイールの回転に至るまで 徹底的に気持ちよい操作感が得られるということ!

大玉でないため、その分の気持ちよさはどうしても劣ってしまいますが、 「小さくて気持ちよくって高品位」という、日本人には堪えられない要素もあり、 一つの極みにあるといってもいいかも。

<総合評価>

繰球の気持ちよさ 大玉でない分Expert Mouseに劣るが、ステンレス・ベアリング支持の独特の感触が心地よいです。
回り出しの滑らかさ 非常に滑らか。滑らかすぎてちょっと触れるだけで動いてしまい困ってしまうくらいです。
回転中の滑らかさ 小球3点支持の艶っぽさはないものの、回転中もとても滑らかです。
ドラッグのしやすさ ボタン配置が上手なため、ドラッグはしやすいです。
対腱鞘炎 パームレフトが適度に尖っていて手に媚びない分、手全体が動きやすい設計は、腱鞘炎になりにくいと思われます。
コストパフォーマンス この造りの良さで直販で6,000円弱と、非常に高いコストパフォーマンスです。
三猫のおすすめ度 ★★★★★
六つ星をあげちゃってもいいくらいのトラックボールです。 Windowsでも英語版ながらpcallyブランド用のものをダウンロードして使えますし、 お値段も6,000円以内と安く、それでいてハイエンドの質感をもった素晴らしいトラックボールです。