トラックボール個別面談

Kensington Expert Mouse 漆(Expert Mouse Japan:model 02651)

Kensington Expert Mouse 5
メーカー Kensington製をベースに改造
ボタン数 4ボタン
ホイール 無し
エンコーダー ローラ式
ボール支持 ステンレスベアリング ローラによる3点支持(エンコーダ兼)
ボール径 57mm
コネクタ PS/2・USB

きっかけは・・、

猫は Expert Mouse 5が大好きです。 一生使いたいトラックボールだから、1台だけ持っているというのはあり得ません。

2004年の夏、Expert Mouse 5は日本での取り扱いが終了しました。 Expert Mouse 7との世代交代だったわけですが、 そのニュースを聞くやいなや 猫はポコポコとExpert Mouse 5を買いあさってしまいました。 その後七陽商事さんの粋な計らいによって 価格改定の後復活したわけで、猫はホッと胸をなで下ろしたのですが、 ・・・はて、この手元の大量のExpert Mouse はどうしましょ。(^^;

漆塗りトラックボールを発注

というわけで、同じモノを違うモノにする定番は塗装です。 もちろん自分でタミヤカラーを吹いてもおもしろそうではあるのですが、 誰もがやっている(?)家内制問屋改造では猫のトラックボールルームが廃るというモノ。 なにか特別な感じがするヤツがいいです。

古から限定モデルといえばゴールドと革張り、そして と相場が決まっています。 と、言うわけで今回は漆塗りにチャレンジしました。 (というか、こういうことするなら猫は絶対人柱になるべきでしょう。)

とはいえ、漆塗りは素人が出来るようなモノではありません。 ブキッチョの猫がこんなモノに手を出したらカブれるわ、壊すわで 永遠に完成しないのが目に見えています。 というわけで、こういうのはプロフェッショナルに頼むのが相場というもの、 漆職人さんに依頼しました。

今回漆塗りを請け負ってくれたのは、 津軽サイバーメディア様。 ご存じ漆塗りマウスを作られている会社です。 漆塗りは 游工房 さんが担当されています。

さて、漆塗りをすることは決まったのですが、 トラックボールには一体どんな塗りが出来るのでしょう? 津軽サイバーメディアのご担当様にお聞きすると、 漆塗りは大きく三つの方法で塗ると考えればよいそうで、

上塗り

黒か朱の単色で一般に見るもの。瑕がついた場合目立つ。 ボタン部分は弱く研ぎ出しが出来ないのでこの方法になる。

ボールにも可能だが瑕が目立つので向かないと思われる。

研ぎ出し

いろいろな漆を何層か重ね、漆の表面にでる層で模様を出す塗り方。 はげると言うことがない。

水の中で漆を研いでいくため、塗る部分がしっかりしている必要あり。 (よってボタン部材は不可)

蒔絵

上塗りか研ぎ出しが終わった後に装飾として書き加える。 はげやすいのでボールには不可。 ボタン部分も出来れば外した方がよいが、修復は可能。

使い込んではげるのも風合いは出る。

とのこと。ふみふみ。 ちなみに黒や朱以外の色は漆に顔料を加えて作るそうで、 手のひらの汗で若干色落ちし、手に付く場合もあるそうです。 なるほど〜。

ボールに塗れるとは思っていなかっただけに 結構ビックリ。Expert Mouse 5ですから色を塗っても問題なく動きますし、 ここは塗らないって手は無いでしょう。 ただデザインは、お値段がお値段なだけに悩みます。 いろいろ悩んで悩みまくって、デザイン交渉だけでだいぶ時間をかけてしまったのですが、 こんなに時間をかけたにも関わらず、結局黒をベースにボール受けの部分を朱色でという保守的なものにまとめました。 ・・・あたしってセンスないなぁ、とつくづく実感です。(TT

デザインを詰め終わって発注したのが2004年の10月11日、 塗り終わって猫の手元に届いたのが2005年の5月11日ですから 実に7ヶ月もの制作期間になりました。職人のかた、本当にご苦労様でした。

今回漆塗りをお願いしたのはボールとボタン、 筐体上蓋で、筐体底蓋はウレタン塗装でお願いしました。 ちなみにお値段は、

上蓋(ボタン含む)21,000円
ボール10,500円
ロゴ、カップの中等5,250円
合計36,750円

になりました。 筐体下蓋は、なんでもラベルやゴム足を貼るための窪みが塗りにくいらしく、 また目立たない部分ですし、猫の懐的にもプラス1万円は無理です。

しかしこのお値段、あたしの懐もだいぶ痛いけれど、 むこう様も元が取れているのか微妙なところです。

恐るべき漆の美

正直なところ、デザインは失敗したと思ってました。 ボールは「月夜の薄雲のような・・・」などとカッコつけて お願いしたら、かなり青っぽくなってしまいました。 (もっと無彩色なのをイメージしてました) また、猫のマークもいびつです。(こういうのは簡単に出来るのだと思ってました)

実物が手元に付く前に組み立て途中の写真をもらっていて、 それを見たとたん結構ガックリと来てしました。 値段が値段だけに「ま、いっか・・」という気持ちにもなれないし、 かといって他の誰でもない猫自身が悪いのですから気持ちのぶつけどころも有りません。

そんな薄暗い心情で受け取った実物ですが、 封を解いて包みを広げボールが顔を出したとき そんな気持ちはきれいさっぱりに吹き飛んじゃって、猫はその美しさに思わず息をのみました。

なんて美しい・・・。

研ぎ出しによって確かに模様がクッキリと刻まれているのに なに、この見たこともない光沢はっ!ただのボールのはずなのに、猫はしばらく見入ってしまいました。 なるほどこれは――美術品だわっ。

本体の質感も負けてはいません。 なんというかそう、黒いのです。 この黒は、なんて黒い黒なのでしょう。 ぴかぴかに磨き上げられたこの黒の隣に置くと、 今まで黒だと思っていたモノが灰色に見えます。 本物の黒ってこんななんだぁ・・・。

実はボールが本体デザインとイマイチマッチしないことを知って、 ビリヤードボールの8番を入手しておいたのですが、 この本体の上に乗せると光沢の違いも凄いのですが(ビリヤードボールがマッド仕上げに見える!!) 色味の違いも気になります。なんか微妙にボールの黒が薄く見えるのです。 漆の黒は美しいと知っていたけれど、まさかこれほどまでとは・・・。

柔らかい手触り

漆塗りのあまりの美しさに目を奪われた猫です。 というか、今まで漆風仕上げのお椀とか、一応漆塗りだけれど やっす〜い箸とか、そんなのしか見たこと無かったのよね、あたしってば。 なんか、この質感の前になにもかも「ごめんなさい」したくなります。 なるほど、海外の人が買いあさるわけだわ。

その見た目の凄さもさておき、 漆は手触りも凄いんです。 漆というと「カブれる」という認識が強いのですが、 実際の所どうかというと体質次第ではあるモノの、 塗装しよく感想させた漆はよほどのアレルギーを持っていないかぎり 大丈夫とのこと。 考えてみればそれはそうで、食器としてずっと日本人は使ってきたんですものね。

で、そんな偏見の目を取り去って漆塗りトラックボールに触れると、 うわぁ・・たまんないわぁ。 ツルツルしていて硬質な感じなのだけれど どこか柔らかいというか、 優しいというか。

猫の貧弱な語彙ではとうてい言い表せないのだけれど、 なんかもう、これ、プラスチックじゃないんです。 金属は金属、プラスチックはプラスチック、木は木の質感がありますが、 これは漆の質感で、もう塗装というよりは素材ですね、これは。 そして「漆の質感」というのは、 何なんでしょうね、磨いた鉱石のような手触りの中に木のようなぬくもりがあるというか、 (そう、漆器のあの手触りは中が木だからじゃなくて、漆だからなのかも) なんとも不思議な手触りで、 その心地よさに猫の手は勝手に意味もなく筐体をなでなでしているのです。

とりこのとりこ

われながら、Expert Mouse 5を漆塗りにしてしまおうという 自分の企画にうっとりしてしまいます。なんて上手いことをやってしまったのでしょうか。 見ても撫でても転がしても官能的な、麻薬のようなトラックボールを作り上げてしまいました。 やばいわ、これ・・・。

むしろこの美しさをみてしまうと、 次のデザインを追い求めたり、手持ちのトラックボールを 片っ端から漆塗りにしてしまいたい衝動に駆られるのですが、 いかんせんそんなお金はあたしはありません。うう、もっと働かねばっ!

とりあえず、次はキーボードを漆塗りかしらね・・。 でも一体いくら掛かることやら・・・。

最後に、猫の野望に 「津軽サイバーメディアさんのデフォルト取り扱い品目に 漆塗りトラックボールが出来る」を追加しようと 心に誓う、猫 20才の春でした。

各部の詳細

表 まずは上面。どうだっ、参ったかぁ!(意味不明)

ダイレクト電球な写真では、反射がすごくて こんな写真になってしまいました。 漆の光沢は凄すぎて、真っ黒につぶれるか 真っ白に反射しちゃうかの2択になってしまうのです。 (猫の写真の腕が寂しすぎるせいなのですけど)

Expert Mouse 5は シンメトリカルで幾何学的な中に優雅な曲線を描く とても美しいデザインなのですが、 それがとても漆塗りにマッチしています。
後ろ 手前から。

幾分反射が押さえられた写真で、 こちらの方が質感が伝わりやすいでしょうか?
左側面 横からのながめです。

見ての通り、筐体下面と上面では全く質感が違います。 (これはかなりの予想外)

でも下手に漆と似せて、「でも、違うのよね〜」状態よりは、 このような感じのほうが良いのかも。
前 後ろ側です。

せめて黒のケーブルが欲しいところ・・・。白いの、目立ちすぎです。
裏 裏側です。ウレタン塗装でザラザラ仕上げ。

サイドビューでも述べたのですが、 猫としては二流漆の光沢みたいな仕上がりを想像していたので、 かなり意外だったのですが、この質感もなかなかカッコよいです。

最近めっきり質感に乏しくなったThinkPadのパームレストに 吹き付けてやりたくなってきます。
猫マーク はやり猫が発注するなら猫のマークは欠かせません、ということで、 蒔絵で猫をお願いしました。

こうして遠目で見る分には良いのですが・・・、
猫マーク拡大 寄ってみるとうーん、猫マークは失敗だったわ・・と思います。

思えば絵ではなくて箔を張って描いている様子で、 尻尾とか耳とかは悪夢のようであったでしょう。 極薄の金属箔をこんなカタチに切って貼ってするなんて 想像するだけで鎖骨の当たりがむずがゆくなってきます。

ああ、深く考えずにこんなん頼んでしまって申し訳ないです、職人さん。
ボールアップ ボールは研ぎ出しという方法で塗ってあります。 これの質感はハッとするほど美しい、ホントに美しいです。 ・・ああ、本体にもどこかコレを入れたいです。 ボタンで研ぎ出しできないのが恨めしい・・。
ボールをはずす お椀の部分は朱の漆で塗ってもらいました。ですが 朱の鮮やかさと均一さが足りないのが残念。 隠れる部分として、それなりに仕上げられてしまったのかしら。

筐体下面の内側を塗ってと頼んでいなかったので白が剥きだしどころか、 飛んだウレタン塗料がぽつぽつしてるのも残念。
うーん、次頼むときがあったら「ここは日常見る部分だから きれいに仕上げてください」と言わなくっちゃ。
ボール 実物の美しさの1/10も出ていない写真ですが、 この研ぎ出しのボールはハッとする美しさがあります。 もう、これだけで美術館に飾ってありそう。

色合いは猫の発注イメージと違っていて、 届く前は「ビリヤードボールと交換してお蔵入りかしら」と 思っていたのが嘘のようで、 ひと目見るなりとても気に入ってしまいました。
この色合いもなんだか地球みたいで素敵でしょう?
黒玉? 黒玉? ボールもボディもとてもとても美しいのだけれど、 それでもいまいちデザインバランスが悪いという事実は否めません。 そんなわけで、黒玉を入れてみます。

猫の意図はお椀にボールを入れたときの赤い金環食のワンポイントだったのですが、 青いボールでは目立たないのよねぇ、、と、いった点が解決されました。

ちょっと地味すぎる感も受けますが、なかなかかしらん。 なんだかブラックオックスを 連想するというか、黒のテカテカってどうしてこうクールで格好いいのでしょう。 あ、でも、漆の黒テカはそれでいてどこか暖かい印象を受けるのが素敵です。

え?、「そんなことよりこの黒いボールどうした」ですか?
8ball 種を明かせば、これはビリヤードの8番ボール。 Expert Mouseのボールはビリヤード球と同じ約57mm。なので こんな芸当ができる訳です。

この「8」バージョンもなかなか素敵なのですが、 問題がありまして、 本体との質感が違いすぎるのです。

写真では全然わからないのですが、実際には 光沢に天と地の差があって光が拡散する分だけ、 8番ボールが僅かにグレーがかって見えてしまいます。
でも、ときどきこの組み合わせでも使いたいなぁ。
デザイン案1 デザイン案2 デザイン交渉の際に 津軽サイバーメディア様が作ってくださった デザインイメージです。

こんな手間をかけて良いのかしら、とも思ってしまいますが、 ユーザサイドとしてはただただ有り難かったり。
無塗装と比較 塗装前→塗装後です。

すでに写真になっておらず、白と立てれば黒が立たず、 黒を立てれば白が立たず・・・。
EM7と比較 黒エキパマ対決〜♪。

てかてかの黒、ということでExpert Mouse 7とはキャラ(?)が被るかとおもってましたが、 並べてみると、あれあれ、EM7ってグレーじゃない・・。

もともとラメの入った黒なので、グレーぽいのがEM7なのですが、 こうして比べるとホントに灰色してるというか・・。 光沢具合も控えめに見えます。

もっとも、漆の光沢が反則なのですけれど。(^^;
グラビア グラビア グラビア グラビア いっぱい写真を撮ってしまいました。 しかし、ぜんぜん元のきれいさが出ない・・(TT)。 猫の腕にとっても愛する廉価デジカメさんにとっても 荷が重すぎます、この被写体。

本物の質感を全然表現しきれていない 写真ばかりですが、それでも漆塗りの美しさがすこしは伝わるでしょうか。 ホントはもっと「黒が反射してる」という感じに取りたいのですが・・、 ラチュードがたりない・・・しくしく。
光の当て方、光源の違い、背景の色合いで ころころと表情を変える様はとても楽しい撮影でした。

それにしてもレビューを読み返すと「美しい」「美しい」ばかりで 他に言葉を知らないのか、というような三流レビューです。(TT) でも、他になんといえば良いのやら。美しいものは美しいんです。

実際の所、このExpert Mouseは4万5000円もするExpert Mouseになってしまったわけで、 あとちょっとで Mac miniが買えちゃうとてもインプットデバイスに払う金額では 無くなってしまっている訳です。 猫としては漆塗りの凄さに大興奮なのですが、 それでもこのレビューを見た人が「じゃあオレも〜っ」と気軽にできないものを レビューする意味はあるのかと言えば あまりないわけです。(要するに、猫は自慢したかった、ということ。なんて人の悪い・・。)

でも、もしこれが2万円だったら?と思います。 レディメイドなら漆塗りマウスは2万円。 たとえば、Expert Mouseじゃなくて、 LogitechのTrackMan Wheelだったら、多分マウスと同じお値段で レディメイドできるのでは? と猫は思ってしまいます。 (ああ、「月」や「月桜」がよく似合いそうです。)

いったい猫が何を言いたいかというと、 レディメイドなラインナップにトラックボールが無いのは 一重にトラックボールがマイナーだからで、 猫のトラックボールルームの野望「PCのBTOオプションでトラックボールが選べるようにする」に加えて、 「漆塗りトラックボールが特注じゃなく買えるようにする」も 野望として持ちたいわぁ、と。

なんだか文章が支離滅裂ですが(^^;)、それぐらい漆のインパクトは凄かったんです。

懐が許すのなら是非試してみてくださいね。

<総合評価>

繰球の気持ちよさ 抜群です。最高ランクの気持ちよさ。漆ボールの手触りも抜群。
回り出しの滑らかさ 非常にスムースに回り出します。やはり大玉の勝利でしょうか?
回転中の滑らかさ 回転中も非常に滑らか。でもそれほど慣性で回り続ける訳でもないです。
ドラッグのしやすさ ボールの操作に手全体を使うため、ちょっと難あり。
対腱鞘炎 本体の傾斜角がちょっと急なのが気になります。
コストパフォーマンス コストパフォーマンスはパフォーマンスが天井破りなのでとても良いのです。 でも人間、だからといって無条件にお金が出せるものではなくて・・。
三猫のおすすめ度 ★★★★★
デザインした猫のセンス以外は完璧なトラックボールです。 さすが漆。Japanと言うだけのことはあります(なんのこっちゃ)。