トラックボール個別面談

Arvel MFB3USM (フリーボールミニ コンビ :MFB3USM-YE)

Logitech ST-65UPi
メーカー Arvel
ボタン数 3ボタン(2ボタン + ボールクリック)
ホイール なし(スクロールボール有)
エンコーダー ゴム巻きシャフト式(ボール) / 光学式(マウス)
ボール支持 スチール小球による3点支持
ボール径 16mm
コネクタ PS/2・USB

トラックボーラーの憂鬱

トラックボーラーは幸せです。

だって日々のコンピュータ操作をトラックボールとともに過ごせるから。 転がしているだけで楽しいトラックボールは、 カーソル操作という「仕事」を「楽しみ」に変えてくれます。

でも、一つだけ困ったことがあるのです。 それは 他の人があたしのPCを触るときに、「なにこれっ!」と雄叫びをあげたまま 操作不能に陥ってしまうことです。 そして決まってこんな言葉を聴かされるのです。 「ね、ね。マウスどこ?」

マウスなのにトラックボール?

実は猫はトラックボールユーザに成る前はカトキマウスを愛用していました。 このマウス、大変アクが強いながら猫はとても気に入っていたのですが、 あまりにアクが強いためマウスのクセして「一見さんお断り」。 トラックボールを扱えず「マウスちょーだい」といった人にこのマウスを差し出すと 猫はどうにも嫌がらせをしている風に取られてしまうのです。(オマケにキーボードも変ですし・・)

そんなこんなで、普通のマウス購入を迫られた猫が それでも普通のマウスはつまらないわぁと選んだのが本機「フリーボールマウス」ことArvel MFB3USMです。

フリーボールマウスとは、スクロールホイールの代わりにスクロール用のトラックボール「スクロールボール」を搭載したマウスです。 専用ドライバをインストールすれば縦だけでなく横もスクロール出来るようになることも魅力ですが、 何よりスクロールとボールの相性の良さによる スクロールの気持ちよさが「買って良かったぁ」と思わせる逸品です。

とはいえ、ここは「猫のトラックボールルーム」。いくらスクロールが気持ちいいからといって スクロールホイールからボールに変わっただけの「ただのマウス」を取り上げるわけはありません。 そう、このフリーボールマウスをただの変わり種マウスと思うなかれ、 実はモード切替で「トラックボールモード」に移行可能な ビックリどっきりマウスなんです。

トラックボールモード

Arvelのフリーボールマウスシリーズは、センターボタンを入力しながら左ボタンを押すことで 上面のボールでマウスカーソルを操作できる「トラックボールモード」に切り替わります。 そうすると本機は 小型の据え置きトラックボールに早変わりします。 ちなみにこの「モード切替」はハード的にやっているので、専用ドライバを入れなくても モード移行が可能です。

本機「フリーボールマウスミニ」は、マウスとしてもかなり小さいサイズで、携帯も苦になりません。 「トラックボールモード」と合わせるとノートPCと一緒に持ち歩ける「モバイル トラックボール」と捉えることも出来るわけで、 あたしたちトラックボールユーザからすると、とても貴重な一台です。

それでは、トラックボールとしての使い勝手はと言いますと、 ・・・・えっと、実は余りよく無いです。

さすがに「トラックボールになるマウス」ですので、 そこらへんのアラはどうしようもなかったというところかしら。 具体的には、大きな3つの問題が目立ちます。

まず一つ目の問題は、さすがにボールが小さすぎること。

本機と同じ大きさのボールは オプティマ(旧 東京ニーズ)のNTB-800があり、こちらは実用的な操作感がありました。 もちろん本機もカーソル操作に問題は無いのですが、「操作ができる」以上は求められない感じで、 はっきり言って気持ちよさとは無縁です。(これはNTB-800もそうでした)

ただ「ミニ」でないほうのフリーボールマウスならもう少しボールが大きいので、ここら辺は改善されるのかもしれません。 問題という問題ではないものの、気持ちよさ至上主義の猫は「おっきい方を買っておけば良かったかしら」とちょっと後悔、しきりです。

次に2つ目の問題点はドラッグがしにくいこと。

本機はトラックボールとしても使える優れものながら、あくまで製品の主体はマウス。 ボタンが側面まで大きく回り込む様にデザインされてはいるモノの、それでもドラッグは辛いです。

「人差し指クリック & 中指ボール」とか、「親指クリック & 人差し指ボール」のように ちょっと不自然なポディションに慣れれば克服できるものの、かなりドラッグしにくい配置なのは否めません。

最後に三つ目の問題は、トラックボールモード時にマウス本体を動かしてしまうと、スクロールが発生してしまうことです。

実はトラックボールモードに移行すると、ボールがカーソル操作になるだけではなく、 マウス移動がスクロール操作になってしまいます。(つまり、入れ替わるんです) そうすると、なまじ本体の小さい本機ですから、ちょっと動いちゃっただけでスクロールしてしまって 使いにくいことこの上無い。これはどうせならOFFにして欲しかったところ。

この問題に対しては、猫は「どうせトラックボールとしてしか(自分は)つかわないんだから・・・」と、 底面の光学センサにドラフティングテープを貼ってしまっています。 他にもポストイットを貼られる方とかもいるようで、つまり何でも良いからふさいでしまえば なんともアナログチックに解決します。

ただ、以上の欠点からスクロールに大変困ってしまうのが本機です。

本体移動でスクロールをするのは誤動作したり、さすがに頭がこんがらがってしまって鬱陶しいですし、 かといってコレを殺すと、スクロールバーのドラッグでスクロールするしかないですが、 肝心のドラッグ操作も使いづらい。なんだかとてもジレンマを感じてしまいます。

ですので、猫的には「困ったときのTrack Scroll」で、 スクロールモードへの切り替えでスクロールするのがベターかしら、と思います。 もちろん本機を「センター + 右クリック」でマウスモードにチェンジすれば、 ボールでスクロール出来るのですが、マウスカーソルの形状が変わらないことと、 「マウス→トラックボール」が「センター + 左」、「トラックボール → マウス」が「センター + 右」と、 行きと帰りとで操作が違うので、猫的には 頻繁な切り替えにはちょっと向いていないかしら と言った感じを受けます。

・・・と、以上は専用ドライバを入れないでのレビューです。 3番目の「本体移動でスクロール」は専用のドライバを入れれば何とかなるのかもしれませんが、 猫的にはピンチヒッター的位置づけな本機の為にドライバを入れるという気にどうしてもなれず、未確認です。 う〜ん、申し訳ないにゃ。

専用設計でないけれど

トラックボール専用設計ではない為、結構アラが目立つ本機ですが、 マウスユーザがマウスとして使える点と、そのトラックボールらしからぬ小さなサイズというメリットは こういうアラをも「ま、いっか」と思わせてしまいます。

ここら辺はコンセプトの勝利と言ったところでしょうか? マウスユーザからもスクロールの気持ちよさから評判のよろしい本機ですが、 我らトラックボールユーザも、携帯に負担が全くかからないトラックボールとして 一見の価値ありなポインティングデバイス。なかなかどうして、あなどれません。

正直、純粋にトラックボールとして評価するといまいち(どころか、いまに、いまさんレベル)な 本機ですが、そのニッチェ的立場ゆえに ちょっと手元に置いておくと、ちょっとしたときに重宝するなかなか便利な憂いヤツです。

各部の詳細

表 ミニカーばりのツルテカボティが可愛らしい本機です。

ホイールの代わりにボールを配置するため、どうしてもスペースを食べてしまうのですが、 それを上手く処理したデザインラインです。

本体中央と両サイドを分けているスジ彫りはデザイン的な飾りではなく、 取り外せるカウル部の分割ラインになっています。
後ろ 手前からです。

おまんじゅうチックなキュートなお尻は、表面仕上げと相まって 車のリア部を想像させます。
左側面 側面から。

なめらかな曲線を描く筐体ですが、ボタンから伸びるラインは一段落ちるような段差を描ようになっています。 できれば段落ちいっぱいまでボタンにしてくれると トラックボールモードのとき使いやすかったのに・・と思ってしまいます。
前 奥から見たところです。

左右のボタンはタクトスイッチで、 パチパチとした感触はあるもののやはりマイクロスイッチには劣ります。

ボタンと筐体下部の隙間を覗くと筐体上面の黄色いパーツと筐体下面の黒いパーツの 接合面が見えるのですが、ここまで面一になっているのは、如何にも日本的といいますか、芸が細かいです。
裏 シンプルな裏面です。

写真左が光学センサ、右下の楕円状のボタンがカウル取り外しボタンです。

筐体を止めるネジは、見えている一個だけで、隠しネジはありません。
ラベル ラベルです。簡潔で読みやすいですね。

MFB3USMが本機を表す型番で、「-」以降の枝版はカラーを表します。 本機「YE(黄)」の他にMT(シルバーメタリック)、LM(ラベンダーメタリック)、PM(シルバーピンク)、WH(白)、RD(赤)があります。
カウル取り外しボタン 背面お尻側です。

写真下が光学センサです。写真右端に見えるネジは 筐体を止めているネジで、この一本を外すだけで筐体を開くことが出来ます。

さて、写真右上にある不思議なボタンですが、 このボタンを押下すると・・・、
カウルオープン このように、カウル部分がワンタッチで開きます。
カウルをはずす カウルを外したところです。

カウル部を外すとボールが取り出せるようになるので、 分解しなくてもこの状態でお掃除できます。
ボールを外す ボールを外したところです。

ゴムシャフト式のエンコーダとステンレスの支持小球が見えます。 ごくごくオーソドックスな構成ですが、ボールサイズが小さいので、 ゴムシャフトでもそれほど繰球感に影響はないようです。
筐体オープン お尻のネジを外して筐体を開けます。

一見すっきりしているものの、小さいマウスですので 右に光学センサ、左にコントーラ、上にトラックボール部 & ボタンと 良く整頓されながらもぎっちり詰まっています。

それにしてもすっきりとしたとても綺麗な設計ですね。
ボール周辺 ボール周辺です。

手前に見えるスイッチが左右のクリックボタンです。さすがにスペースがなくタクトスイッチになっています。

本機は、センタークリックをホイールマウスと同じように ボールの押下で行うようになっています。
そのためサスペンション(写真中央に見えるスプリング)でボール受けを宙に浮かせています。 本機には同じようなサスペンション3つ設けられていてボール受けを支えています。
センタークリック機構 前述のサスペンション機構でボール受けが浮いているので、 ボールを真上から押し込むとボール受けごと沈み込み、 ボール受けから伸びてるアームが画面左手前の銀色の天板をもったタクトスイッチを押す仕組みです。

先代のフリーボールマウスでは、ボールの手前にセンターボタンを別に配置していたのですが、 本機のボールクリック機構は誤動作ほとんどなく、なかなか良い感じです。
ボール受け ボール受けです。センタークリック以外はごくごく一般的な造りです。

ちなみに写真上部(マウス右ボタン側)で基盤が割ってありますが、左ボタン側はしっかりつながっています。 この分割は、オプティマ(旧 東京ニーズ)のNTB-800のように基盤ごと沈んでクリックする機構を連想させますがそうではなくて マウス右下にある光学センサの厚みを稼ぎつつ、ボール・ボタン側は薄く平らにしたいという思惑からのようです。
コントローラチップ コントローラ・チップです。
センサーを殺す 本機をトラックボールモードで使う際邪魔になるのが、 本体移動でのスクロール機能です。

これをてっとりばやく無効にするため、猫はマスキングテープなどの ノリの残らないテープでセンサを塞いでしまってます。
大きさ比較 大きさの比較です。

さすがはモバイルマウスですので、InteliMouseと比べても抜群の小ささです。
ボールの大きさ ボールとドリキャスのVMとの比較です。16mmのボールは比較すら無意味な気がしますが一応恒例ということで(^^;

ちなみにこのボールは「トルマリン」という鉱石で出来ているそうです。 トルマリンは圧力がかかるとマイナスイオンが発生するとのことで、 本機はちょっとしたマイナスイオン発生装置にもなるわけです。(ホンドかしら?)
グラビア マウスでもあり、トラックボールでもある・・・。非常にコウモリさんな本機ですが、 反面現在のトラックボール市場の狭さから、商売に成り得なかった 「ハンディ」ならぬ「モバイル・トラックボール」を実現できた点は 「コウモリ器機」ゆえのトラックボールモードでの使い勝手の悪さを払拭して余りあるものです。

そんなこんなでモバイル用として、マウスユーザの「ね、ね、マウスどこ?」対策として 一台持っていると嬉しい本機です。この路線が今後も続いていってくれると良いわ、と願ってしまいます。

<総合評価>

繰球の気持ちよさ まったくありません。16mmは実用的の最低ラインかしら?
回り出しの滑らかさ 滑らかですが、機構的な工夫の結果ではなくボールの小ささ故です。
回転中の滑らかさ 上に同じく。当然ながら慣性がほとんど感じられないので評価対象外です。
ドラッグのしやすさ かなりやりにくいです。
対腱鞘炎 無理な指配置でドラッグ操作しない限り、問題はないと思います。
コストパフォーマンス マウスですので、トラックボール慣れした金銭感覚にはとても安く感じられます。
三猫のおすすめ度 ★★☆
以上、トラボモードでの評価。 基本的にトラボモードはおまけですので、期待して買ってしまうとがっかりします。 逆に期待しないで買うと意外に使えるので嬉しくなるといったところ。微妙です。 マウスとして買うなら、かなり良い商品だと太鼓判を押せるのですが、 とはいえ「モバイルトラボ」もニッチェですので、トラボユーザもお試しで一つ入手するのも良いかもしれません。