キーボード個別面談

Unicomp UNI04C6

Unicomp UNI04C6
種類 英語85キーボード
メーカー Unicomp
キースイッチ メンブレンシート
アクチュエータ バックリング スプリング
キートップ印刷 含浸印字
コネクタ PS2

購入のいきさつ

IBM Space Saver です。 メンブレン・ラバードームばっかりの個別面談では珍しいキーボードです。

猫はこういったメカニカルタッチのキーボードはあまり好まないのですが、 V/mag.のキーボードレビューでPCに繋いだ状態で初めて触ったとき、 その官能的打鍵に好みもへったくれもなく魅了されてしまいました。

猫が購入したのは秋葉原USRE'S SIDEで、 展示品だったものです。(店員さんによると本機は製造終了になったそうで、 そのためだそうです。) 展示品というと状態が不安だったりしますが、 たたいてみた感じ記憶にある本機の打鍵感と一緒だったので購入に至りました。
スタバ斉藤さんが3年つかっても全然状態が変わらない(第一回の最後の方です。) そうですし、本機の耐久度は折り紙付きですね。

バックリング・スプリングの打鍵感

バックリング・スプリング機構を採用した本機打鍵はさすがに 近年の腱鞘炎を意識した軽いタッチのキーボードに慣れた手にはとても重く感じられます。 打鍵のスピードはその重さから、ある程度以上にはなりません。 普段高速打鍵する人には本機の打鍵感は足かせに感じるやもしれません。

バックリング・スプリングは、スプリングを押し込んでいったとき、 ある閾値を超えるとスプリングがペコッと折れ曲がる現象を利用した アクチュエータで、その独特の打鍵感から愛好者は多いのですが、 現在この機構を利用した新型キーボードが出ることは滅多になく、 惜しいことに消えゆく運命にある方式です。 バックリング・スプリング機構については百聞は一見に如かず、 Qwerters Clinicさんや、 鍵人さんに 詳しい解説がありますのでご参照ください。

バックリング・スプリング機構の打鍵感の特徴は、 「行き(押し込んだとき)」と「戻り(離すとき)」の感触が全く違うことです。

ラバードーム・メンブレン式のキーボードは、多少の差異はありますが、 「戻り」はほとんど「行き」の逆転再生になります。 ところがバックリング・スプリング機構は、「行き」は明確なクリック感があのに 「戻り」はクリックが発生せずなめらかに戻っていきます。

本機のクリック位置は結構底付き間近なのですが、 人間の感覚とは面白いモノで、 どうも「座屈→元に戻る」までを「クリック後」と認識するらしく本機の強いクリック感も手伝ってか、 実際の打鍵時にはクリックの感触の後すぐ底付きしてしまうにも関わらず心地よい「打ち抜き感」を感じます。 またストローク自身も実際より深く感じるのも面白いです。

クリック感とストローク、「行き」と「戻り」の特性の差については、 SPARCさんのキーボードの部屋 に実測データとコメントがあります。こちらも非常に参考になりますのでご覧ください。

本機の配列

縦長エンターキーを持つ本機は、非常に日本語キーボードに近い配置で、 BackSpaseと右Shiftから1キーづつ切り出せばそのまま日本語キーボードになります。 日本語キーボード慣れして猫にとってこの配列は非常に打ちやすく、 邪道ですが猫は英語キーボードも日本語キーボード認識で使うので実は嬉しいくらいに 配置のストレスがありません。

といっても普通の英語キーボードユーザにとってはかなりクセのある配置でしょうし(^^;)、 本配列を気に入っている猫ですら左シフトの短さはちょっと気になる所です。

本機の使いどころ

キーが重く、高速打鍵には向かない本機ですが、たたくような打鍵をする向きには 非常に打ちやすく感じます。 スピードこそ出ないモノの、本機の求めるリズムでの打鍵を行った際の 入力のしやすさは格別で、猫の場合はかなり誤入力が減りました。

本機の打鍵感は既に電子デバイスのそれではなく、 スイッチが入り文字コードが送り出されるというよりは、 キーをたたきつける力がなんらかのメカを介して そのままディスプレイに文字を押しつけてるんじゃないかしらと錯覚する、 非常にリッチな打鍵感です。まさしくキーを「打つ」といった感じ。

また本機はなぜだか打鍵中に優しい気持ちになれる不思議な魅力があります。 比較的のんびりしたリズムがそうさせるのか、 タイプライターチックなノスタルジックな打鍵感のおかげなのかは解りませんが、 コラム、小説、日記、手紙といった、文字通り「文章を打つ」作業との相性が良い気がします。

反面仕様書・マニュアルやコーディングなど どちらかというと「入力する」作業にはあまり適していないような気もしています。 (実際ハードな入力作業には本機の重いタッチは少々辛いです。)

猫はこのキーボードの打鍵は「ペンで文章を書く」感覚に近いモノを感じます。 一通に時間を掛けてかくようなごくごく親しい人へのメールを本機を使って書き上げるとき、 猫は幸せを感じます。 乗らない文章作業だって、本機を使えば楽しくかけてしまうのです。

ただなまじ気持ちよいだけに 気が付かぬうちに体に過度の負担が掛かっていることが多いです。 少年漫画の展開じゃありませんが痛みやつらさを感じないけどしっかりダメージは蓄積していくわけで、 これは結構危険なキーボードかもしれません(笑)。

そんな訳で打鍵感じゃなくって体の負担の方で、猫にはちょっと常用はむりだなぁと言った感じ。 でも気持ちよくってついつい引っ張り出して使っちゃう・・。 クセになるキーボードです。

各部の詳細

背面 かなり重いキーボードです。重さで安定するせいかゴム足は手前にしかありません。

スピーカ口がありますが、実際には中身空っぽです。
ラベル ラベルです。

「Modification of IBM P/N 1394054」の文字通り IBMの1394054、Space Saver 85Keyと言われるものです。
チルトスタンド チルトスタンドはゴム靴やこった機構はないモノの、 よくあるプレート状ではなくやおら頑丈そうです。
排水口 排水口です。

水をこぼすと内部フレーム上面をつたいここから外に出ます。
コネクター Unicomp(というかIBM)のキーボードコネクタです。
PS/2端子よりしっかりしてるのが何というか・・
筐体のねじ穴 筐体は2本のナットで固定されています。

ナットの経は5.5mmです。
配列・エンターキー周り 非常に日本語キーボードに近い配列です。

バックスペースと右シフトを一つづつ削れば そのまま日本語キーボードになりそう。

慣れですけど、猫にはこのエンター機は非常に打ちやすく感じます。
配列・左シフト周り 逆にちょっと何ありが左シフトの短さ。

ちょっと打ちにくいです。
カーブド・ストラプチャ 実に豪快なカーブを描くキー配置です。

これだけ曲がっているとスライドレールの向きも湾曲する 「ステップ・スカルプチャ1形式の方が有利」というのも納得できます。
筐体を開ける 筐体を開けて見ます。

このレベルのキーボードでは当たり前の 「筐体はただのケース」構造です。
筐体オープン横 湾曲した板金にしっかりさえられたフレームです。

写真左のポッチに板金がひっかがっています。
上の留め具 ビックリしたのですが、ケースと中のフレーム部分は ネジ止めなどの固定はいっさいされていません。 (ネジはグランドを止めてるモノで板金と筐体を固定するモノではないです。)

上のピンと下の爪に板金を引っかけてあるだけですがその重みとケースの剛性で 不安げなところは全くありません。
下の留め具 下側は爪で止められているだけです。

ちなみにその下にある穴は排水口です。
ケースの厚み ケース上面裏です。

鬼の様な肉厚です。もうケースだけでもほとんど歪みません(^^;
キーボードの中身 中身です。

非常識なくらい重いです。フレームと板金がしっかり固定され、 剛性感は既に兵器のよう・・・。

正直この作りで1万円台というのは採算がとれるのかしら・・。
キーボードの中身を横から 側面です。板金の反り返りはもうそのままの形状で がっちりととした質感があります。

(この写真を取るのに また重くって大変でした・・。)
グランド 何もここまでと思うのがグランドで、 コントローラ基盤からのびたケーブルを板金に 6mmナットでしっかり止められています。

筐体を止めるナットよりも大きいのまた・・。
キートップを外す キートップをハズします。

筐体に見えるスプリングはバックリング・スプリング機構のキモです。
キートップ 本機のキートップは、指に触れるキートップカバー、 実質的なキートップ兼スライダの2重構造になっています。

飛び出している歯欠けのパイプはスプリングのガイドのようなモノで、 キートップぎりぎりの円形の枠がスライダになります。
スライダ 写真ではわかりにくいですがバックリング・スプリングの座屈を誘導するため パイプの底面は斜めになっています。
中身裏側 とても厚い板金です。これとスライドレール側フレームが 貫通したフレームのピンを溶かして固定されています。 その数実に48箇所!
とてもしっかり止められています。

猫の買ったのはピンの頭が折れちゃってるのがちらほら(展示品落ちですしガツンガツン落ちたのでしょうか?) ですが剛性に影響はないようです。
板金止め こんな風にしっかり止められています。
というわけで、これ以上分解すると戻らなくなっちゃうので ここで終了です。
ケース下面 ケース下面です。特にこった構造はしていないのですが、やはり肉厚が凄い。 この下面だけでもとても歪みにくいです。
折れたピン 上写真で黒く見えるポッチは板金とフレームを固定するピンの折れたのです。(^^;

ああ、こんなに・・・。
スピーカ口 スピーカがはまる部分です。
本機ではもちろんスピーカは付いていませんが、口だけ残っています。

左に見える土手が内部フレームを支える台となる部分です。
プリント基板 コントローラ基盤です。

最近のモノに見られない豪華な(?)構成には設計された時代を感じます。
半田で文字 別にどうということじゃないんですが半田で文字が書いてあります。
コントローラ コントローラチップです。
グラビア 今回の個別面談、かなり困ったことに存在価値がありません。 本機の魅力を説明するには単純な分解以上の解説が必要で、 残念ながら本サイトのレビューレベルでは不十分だからです。
贅沢な素材使いとバックリング・スプリングという優れた機構があわさり形成される 打鍵感は、機械式カメラのフラッグシップ機の操作感に通じるリッチさがあります。

何かのメカ(電子機器ではない)を操作しているかのような打鍵感は、本機を「キーボード」と呼ぶことすらおこがましく感じさせます。 「PCに文字を入力している」のではなく、今まさしく私は「文字を打っている」と体感させる、 本機はPCという味気ない機械に道具の美しさを添えてくれる素晴らしい鍵盤です。

<総合評価>

キートップの手触り 2重のキートップは重厚で◎
打ったぞ感(クリック感) これ以上ないくらいのクリック感。かなり鋭角的ながら乾きすぎた感じはしない
省指力 かなりマイナス。非常に力がいります。
対腱鞘炎 上の理由であなりよくありません。
コストパフォーマンス 絶対的に高いですが、作りを見れば良心的な値段です。(3万しても文句は言えない)
三猫のおすすめ度 ★★★☆