キーボード個別面談

Microsoft Microsoft Basic Keyboard

Microsoft Basic Keyboard
種類 日本語108キーボード
(109 -1(右Win) ホットキー含まず)
メーカー Microsoft
(製造元:NMB)
キースイッチ メンブレンシート
アクチュエータ ラバードーム
キートップ印刷 レーザー印刷
コネクタ PS/2

「やすかろう」だが、さて?

最近お仕事では、Microsoftのソフトウェアの品質の低さに泣かされる日々が続いています。 Microsoftの製品って、 見栄えのする機能はそろえているものの、カタログスペックにでない「品質」という面において 大変な問題を抱えており、かつ会社としてそれを改善する意志がない、というのが猫の見解ですが、 ことハードウェア製品においてはその限りでは在りません。

MSのハードウェア製品の悪評ってあまり聞きませんね。 目立つ機能はもちろんのこと、品質も在る一定のクォリティをキープしているからこそ、 高い評価が得られているのだと思います。

そんな高品質、高価格のMSキーボードですが、最近になって とてもお安いキーボードがリリースされました。 安いだけあってナチュラルでもホイール付きでも無いごく普通のキーボードですが、 それでも2,200円という値段を聞くと、 誰もが品質を犠牲にしてるのでは?と、不安を持ってしまうんじゃないかしら?

果たしてMSは品質を捨て安さを取ったのか、それとも品質を保ったまま企業努力に徹したのか、 非常に興味深いところです。

と、言うわけで今回は話題(?)のキーボード Microsoft Basic Keyboard の面談です。

NMBの新・廉価版キーボード

このキーボード、種を明かせば NMB製 のキーボードで、ゴム椀こそ違うものの、そのシリンダ構造は IBM Space Saver II Keyboardと同じ、 キートップ・スライダ一体型のキーボードです。
ですが、さすがに最新のキーボードだけあって、Space Saver II Keyboard よりも洗練されています。

触ってみてまず驚いたのは、この構造のNMBキーボード特有の良好なクリック感を持ちながら、 その難点であるキーのひっかがりが全くないと言うこと。

スライドレールやスライダーの加工精度をあげ、マージンを少なくしたと感じられます。 それによって、ひっかがらないと言うメリットとともに、キーに触れたときに感じるプラスチックのたわみ・こすれによる 「雑音」もかなり軽減されています。

またこのキーボードは、プラスチックのみの筐体にもかかわらず、かなり歪みにくい。 持ったときにこれだけ軽い割にはしっかりしてると感じます。
分解してみると一目瞭然なのですが、各所に梁やはめ合わせ構造を配置し、 板金などを持たずとも歪みにくくなるように配慮されています。
もしかしたら歪みにくい筐体を確保したために、スライダーからその分のマージンを減らすことが出来、 結果打鍵感が改善したのかもしれません。

ポコポコっと言う弾むようなクリック感を持ちながら、プラスチック由来のノイズと、 スライド時のひっかがりが無いこのキーボードの打鍵感は、 ハッキリ言って Space Saver II Keyboard の上を行っています。
量産効果やトラックポイントというハンデが在るとは言え、 この値段差を考えるとこれは凄いことです。

MSのこだわりの形状

ところでこのキーボードに限らず、最近(でもないかな)のMSのキーボードは チルトスタンドを立てないと手前が高くなる、ちょっと不思議な形状をしています。 つい普段のクセでチルトスタンドをたてると、パームレフトがないとちょっと苦しいくらい段差ができてしまい、 なんでこんな形にしているのかしら?と思わず首を傾げてしまいます。 ですが、実はこの形状、チルトスタンドを立てないで(つまり奥が低くなる状態で)使うと、意外なことに打ちやすいんです。

これは手首がのびるというの点もさることながら、 遠くほど低いという形状のおかげで、上段のキーも「指が落ちる」と感じで伸ばしやすい、 指が勝手に打鍵しにいく錯覚を覚えるほど自然にタッチ出来ます。 これはなかなか不思議な感触ですが、実に打つのが楽でくせになりそうです。

さすがはナチュラルキーボードやインテリマウスを生みしマイクロソフト。 今までの常識と逆の傾斜をつけるという発想、思いついてもなかなか出来るもんじゃありません。
(ああ、ホントにハードだけはいい企業なのね。)

また、今までの手前ほど低くなる傾斜が好みなら、別途パームレフトが必要になるもののチルトスタンドを立てればOKですので、 好みに合わせて選べます。

鍵盤非趣味者へのプレゼント

Microsoft Basic Keyboard は、値段なりの作りをしています。 部品点数を極力減らし、構造を簡略化していて、 それらを見る限りでは、秋葉原の1,000円キーボードと大差ない作りをしています。

ですが、あちこちに散見される丁寧な作り込みやノウハウで、 1,000円キーボードと一線を画する品質を実現しているキーボードです。

また、各所の印刷や、排水溝やケーブルのブッシュなどの構造を見るつどに、 PC初心者・鍵盤初心者への深い配慮が見られます。
このキーボードからは値段も含め「鍵盤に特に意識を持たない方へ良質なキーボードをプレゼントする」、 そんなコンセプトを感じてしまいます。

もちろん、ちゃんとコストをかけたキーボードとは比べものにはなりません。 キータッチにどことなく値段なりの部分を感じる時もあります。 それでもこのキーボードは本当に良いキーボードです。

猫は「お金をかけないで良いキーボードが欲しい」と訪ねられたら、 きっと秋葉中古のRT6652か、このキーボードをお勧めするでしょう。 これはそんなキーボードです。

各部の詳細

キーボード背面 キーボード背面です。。
表は白なのに裏はダークグレーのパンダカラーです。
トレー状に一段窪んだ構造や、13箇所ものネジ止めに 筐体の強度を保つ工夫が見られます。
キーボード側面 流れるようなラインが美しい側面です。
分割ラインはちょっと珍しく、側面を斜めに横切っていますが、これは強度というよりは デザイン面でのことだと思います。

キーはキチっとステップ・スカルプチャです。
ラベル ラベルです。

"RT9480 V:58TWJP"を見る限り、 NMB製の様です。
チルトスタンド チルトスタンドです。

大柄で薄板なチルトスタンドには不安を覚えますが、 使ってみるとこれといって問題はなさそうです。
排水口 キー裏面には2カ所、排水口が空いています。

スライドレール部がトレイ状になっているため、 キーボード上に水をこぼしても、筐体内部に進入しない作りになっています。
キー配置 本機で唯一、一般的でないのが、Deleteキー周りのキー配置です。

この配置はElite以降のNatural Keyboard で共通のものですので、 MSとしては一般的ですが、ちょっと違和感ありますね。
この配置のおかげでわずかながら省スペースになっています。

でも、MS自らが右Winキーを排除するのって、 「なんだかな〜」と思います。
Winキー Winキーといえば、このキーボードではWinキーに「スタート」と書かれています。

猫としては、Win + R とか Win + D とかに価値があると思っているキーなのですが、 PC初心者さんにはやっぱりスタートボタンの代わり、というほうがわかりやすいからでしょうか。
ホットキー 「今時のキーボード」なので、ホットキーが申し訳程度に3つ付いています。
キーをハズした図 キートップを外します。

ここら辺は Space Saver Keyboard や MS Office Keyboardなどと そっくりですね。

「F」「J」「5」キーのみ、 スライドレールの向きが異なっているのも同じです。
キートップ 写真では解らないと思いますが、 Space Saver II Keyboard と同様にスライダの四隅の凸部に 潤滑剤が塗られています。

スライダの形状もそっくりです。
大きいキートップ 大きめのキーになると、スライダそのものが大型化します。
通常サイズのキーには無いのですが、大型キーのスライダには四隅に着陸脚のようなものが出ています。

打鍵感の改善というよりはおそらく斜めに押し込まれたとき導通しなくなるのを防ぐためのものじゃないでしょうか?
スペースキーを外す ただしスペースキーだけは例外で、通常のキーと同じスライダが付いています。
その代わり、針金のガイドと、キートップの梁を利用したプラスチックのガイドレールで、キー全体を支えています。
筐体オープン。 筐体をオープンすると、ラバーシートとコントローラ、メンブレンシートが見えます。

NMB特有のメンブレン上側シートにラバーカップが一個一個接着してある構造ではありません。
ラバーカップ ラバーカップの形状はRT6600系などの個別ラバーカップのときと似ていますが、 1枚シートになっているなど、コストダウンの跡が伺われます。

Space Saver II Keyboardでも個別のラバーカップでしたが、 そちらと比べる限りでは打鍵感に特に悪影響は内容です。
やはり個別ラバーカップはスライダに「着地脚」を持つ場合の打鍵感向上用 だったのでしょうか?
メンブレンシート ラバーシートをめくるとメンブレンシートが顔を出します。

ラバーカップが別になったこともあり、ごくごく普通な感じですね。
コントローラとの接合部 このお値段のキーボードということで、メンブレンシートとの接点はコネクタ接続ではなく、 圧着によるものです。

下側にラバーのバーを置き、メンブレンの接点を挟み込んでコントローラを3本のネジで締め付ける構造です。 A4techのKB-6Hiとよく似た構造ですね。

基盤の黒いポッチはコントローラチップで、こちらもよく似ています。
コントローラ 基盤表側がこちら。これは安そうです。
ケーブルのブッシュ ケーブルは 専用の大きなブッシュでケーブルをしっかり固定しています。 これならば、よほどのことがない限り断線しなさそうです。

他の部分のコストの掛け方からみるとちょっと贅沢に感じますが、 キーボードの故障の原因となりやすいところだけに、手の抜けないところなのでしょう。
ケース下面 筐体下面です。

結構のっぺりしていますが、トレイ上に盛り上げた構造や、 四隅のボックス上の構造など、強度に気をつかっている様子。
排水口内部 筐体上面と下面を少しずらして見ました。
画面中央に見える穴が排水口です。

排水口はこのように筐体上面のトレイ下部に空いた穴から、下面に直通する穴へとつながっていて、 トレイ内に進入した水を排水するようになっています。
筐体上面裏 下側と異なり、上面はかなりでこぼこしています。
メインキー部とテンキー部のトレイを繋ぐところにある梁や、 下面と対になる周辺のボックス上の構造など、かなり補強が入っています。
スライダー Space Saver II Keyboardとよく似た形状ですが、 スライド時のひっかがりのなさはコチラの方が断然上です。

これは蓄積された経験がものを言っているのでしょうね。
梁構造 トレイとトレイの間など強度がいりそうな部分には梁構造を持たせて 歪みにくくしています。
はめあわせ構造 梁構造だけでなく、筐体上面と下面にボックス上のフレームを形成し、 それをはめあわすことで強度を出す構造が、上下左右辺の計4箇所にもうけられています。
これによって、筐体上面・下面が滑りずれ全体が歪むのを防ぐ様です。

こういう細かい工夫が嬉しくなってきますね。
箱 箱のラベルです。

何気なく書いてある "TEAM : NMBT"が気になります。
グラビア ここまでこのキーボードにかなり好意的にレビューしてきましたが、 もちろんちゃんとコストをかけたキーボードより打鍵感が良いと言うつもりは在りません。
たとえば、鉄板が仕込まれているキーボードに比べると、どんなに構造に工夫をして強度を出そうとしたところで、 打鍵感のキレでは適いません。

ですが、これだけコスト的に厳しい条件になっても尚、それに甘えず打鍵感を良くしようとする姿勢が とても好ましいと思うのです。

<総合評価>

キートップの手触り ごく普通のプラスティック。
打ったぞ感(クリック感) 明確だが弾性のあるクリック感。動きもスムース
省指力 MS系特有の打鍵力と打鍵感のバランスがあり、良好。
対腱鞘炎 手前が高くなる形状は手首に負担を掛けにくく効果的。
コストパフォーマンス 大変良好。お金を出したくない・新品が良い という条件なら、コレ。
三猫のおすすめ度 ★★★★☆