キーボード個別面談

IBM Space Saver II Keyboard (JP)

IBM Space Saver II Keyboard
種類 日本語92キーボード
メーカー IBM
(製造元:NMB)
キースイッチ メンブレンシート
アクチュエータ ラバードーム
キートップ印刷 シルクスクリーン印刷(文字部のみトップコート)
コネクタ PS/2 ×2

Space Saver II Keyboard 滑り込み購入

キーボードにそれほど興味を持っていなくても知っているキーボードがあります。 例えばHappy Hacking Keyboard とか、このSpace Saver II Keyboardとかです。

鍵盤愛好者としてはそれらの良さは判っていてもなんとなく 「通としては無銘の良品を探すのさっ」と後回しになってしまうキーボードでもあります。 ・・えっ?私だけ?(^^;

それでも最近にわかにスペースセイバーIIキーボードが気になっていました。 ことの発端はStudio Artifactさんの Space Saver II Keyboard で遊ぼう!で実はNMB製だと知ったこと。 実に情けないことに猫はつい最近まで全然知らなかったのです。

というのも、Space Saver II Keyboardは よく店頭展示品が置いてあるのですが、 たいていこれの打ち心地は最悪で、猫としてはこの打鍵感とNMBがどうしても結びつかなかったんです。

NMB製となれば話は別。そういえば展示してあったのは大抵トラックポイントキャップもボロボロだったし、 きっと壊れていただけだったのね、と勝手に納得したとたん、急速に物欲が疼いてきた最中のマイナーチェンジによる製造終了の報。 結局、居ても立ってもいられずゲットしてしまいました。(^^;

気になる打ち心地

猫が購入したものは、どうやら今年(2003年)の4月に製造されたものらしく最終生産分とみて間違いなさそうです。 Space Saver II Keyboardの打ち心地は、生産時期によってだいぶ違うとも聞きますので なんとなく最終完成版みたいな感じがして嬉しいものです。

気になる打鍵感ですが、店頭で感じたようなキーの酷いひっかがりも、押し込むのが苦痛になるようなラバーの反発もなく、 ほどよいクリック感でポコポコッと打てる感触はなかなかどうして好感触です。
もちろんキーにぐらつきがあったりして、全体的にどこか安っぽい打鍵感なのですが、 それでも気持ちよく打てるという意味では十分合格点をあげられると思います。

でもこの感触、どっかで打ったことがあるのよね・・と思ったら、 Microsoftのオフィスキーボードでした。試しに打ち比べてみても驚くほどそっくりな打鍵感です。 う〜ん、最近のNMBはこういう打鍵感で落とし込んでいるのかしら?

正直に言ってしまえば、Space Saver II Keyboardの打鍵感は 同じようなメンブレンシートとラバーキャップを持つRT6600系やRT2300系に遠く及びません。
Space Saver II Keyboardの打鍵感の悪点はほとんどがスライダに起因していて、 精度不足によるキー動作のぎこちなさや、ストッパが無いための底付き時にゴムを潰す感触など、 全体的にゴムとプラスチックの醸し出す雑音がどうしても気になってしまいます。

それでもゴム椀の座屈特性のおかげというか、バランスの落としどころが上手で、 弾性のあるクリック感がポコポコというリズムをつけてくれ気持ちよくキーを打たせてくれます。 少なくてもコレ単体で評価するなら不満は無いと思います。

このキータッチに不満をいったら、最近のMSやロジテックのキーボードもだいたいNGになってしまう訳ですが、 でもIBMでNMBでしょ?やっぱり評価基準厳しくなっちゃいます・・。 できの良い兄をもった弟は大変なのね(TT)

Space Saver II Keyboardの魅力

打鍵感だけを評価するならとても7,600円(IBMダイレクト価格)の価値があるかは正直厳しいところですが、 このキーボードには、テンキーレスキーボードであるという点と、トラックポイントがついているという 非常に大きな魅力があります。

テンキーレスのメリットは省スペースというのも在るのですが、 メインキーを正面に置いたときマウスのポディションとバッティングしないというのが大きいです。
その意味ではキーを変則配置にしてまで小さくして欲しくはないのですが、 ミニキーボートとして中途半端なサイズになる為か、ただテンキーを取っただけのキーボードって あんまりないんですよね。

一方トラックポイントの魅力は、なんといってもキー操作とマウス操作をシームレスに移行できる点。 マウスの代替というより、別ニッチェのポインティングデバイスですので、 例えデスクトップ機でもやっぱりトラックポイントは欲しい。
更に本機のトラックポイントはスクロールも出来るので、ちょっとしたスクロール操作もキーボードに手乗せたままでOKです。これはホント〜っに便利で、一度慣れちゃうとやみつきになります。

変則配列を持たないテンキーレスのキーボードは、需要にくらべて非常に種類が少ないですし、さらにトラックポイントともなると ノートPCですら選択肢がほとんど無いこのご時世、 この二つが揃うこと自体なかなかありません。それでいて打鍵感も悪くないと来れば、7,600円の価値は十分あると思います。

おしまい

Space Saver II Keyboard のレビューには、打鍵感に不満を書いたものが多いです。 ロットによっても打鍵感は全然違うらしいので、猫が買ったRev.B01は Space Saver II Keyboardの中でも比較的良好な打鍵感なのかもしれません。

また、耐久性もあまり良くないそうなので、 今後中古でしか手に入らなくなった場合、購入には注意が必要かもしれません。

というわけで、いつも通りの個別面談でしたが、 Space Saver II Keyboard はいろんな人がレビューを行っているので、 記述内容も皆どこかで見たこと在るものばかり・・。 今回のは存在価値ないかも。(^^;

各部の詳細

キーボード背面 キーボード背面。
結構でこぼこしています。マウスをさせる構造になっているため、 ケーブルを挟む溝が2列になっている点は、IBMらしい心配りです。

下部の三つの長方形の穴は、水抜きらしいです。
キーボード側面 キーボード側面。
くさび状の傾斜があり、打ちやすそうです。
上面のヒートシンク状の処理は少し前のIBM PCのデザイン意匠と共通ですね。

ちなみに一見ステップ・スカルプチャに見えるキー配置ですが、 最上段のキーのみ形状を変えた エセステップスカルプチャ なんだそうです。
エセ ステップ・スカルプチャ構造 キートップを外して並べてみました。
確かに3段目まで同じ形状ですね ・・・しかし、これは猫じゃ気づけません。(^^;
ラベル ラベルです。
写真ではつぶれてしまったのですが、IBMロゴの下の四角で囲んである白文字は "CANADA ICES-003,Class B CANADA NMB-003, Classe B" と書いてあります。

Model No. の "RT3200 V:5NTWJP"は NMBのナンバ体系ですね。

リビジョンは B01 です。
チルトスタンド チルトスタンドです。

気持ち頼りなさげですね。 また、ゴム足も手前側だけついているので滑らないかはちょっとだけ心配でしたが、 使ってみたところ、キーボードが動いてしまうということは無かったです。
PS/2コネクタ 本機はトラックポイントを備えるのでコネクタもマウス用とキーボード用の二つを備えます。
少々太めですが、一本のケーブルにまとめられているため取り回しは悪くないです。
マウスポート キーボードでマウス用のPS/2ポートを占領してしまうため、外付けマウスポートを持っています。

ここらへんは嬉しい配慮なのですが、残念ながら2ボタンマウスしか使えません。
トラックポイント というわけで、マウスポートを奪ってしまったトラックポイントです。

トラックポイントはキーボード主体でPCをオペレーティングする人には本当にありがたいポインティングデバイスで、 ThinkPadユーザなら一度はデスクトップPCにもコレ欲しい!と思ったことがあると思います。

Space Saver II Keyboardは拡張型トラックポイントIVを備えているため、スクロールも トラックポイント一つで出来るのがウリ(これはホントに便利)なのですが、 ThinkPadと比べてボタン類の押し心地がいまいちなのが残念なところ。
Winキーとアプリケーションキー 解せないのが、アプリケーションキーが在るところ。 トラックポイントの右クリックボタンが一等地にある以上、 全くもって押される機会のないキーだと思うのですが・・・。

ちなみにこのSpace Saver II KeyboardではWinキーはXPタイプのロゴになっています。 当たり前のコトですが、箱をあけてビックリしちゃいました。
デリートキー周り 本来PrintScreenやScrollLock、Pauseキーの在る部分がLEDに占拠されてしまったため、 これらキーが一段下に追いやられ、InsertやDelete等もトコロテン式に下に1段づつ ずれています。

これは本機キー配列の唯一にして最大の難点です。
キーをハズした図 キートップを外します。 キートップとスライダは一体成形になっています。

こんなところをコストダウンするようなランクのキーボードではないと思うのですが・・・。
キートップ 写真では解らないと思いますが、 猫が購入したSpace Saver II Keyboard (Rev.:B01)ではスライダの四隅の凸部に 潤滑剤が塗られていました。

本機の打鍵感が、他のサイトでの評判ほど悪くないと感じるのは、 この潤滑剤のおかげかもしれません。
隠しネジ 既に有名な話ですが、Space Saver II Keyboard の 筐体を開ける際にはトラックポイントのスクロールボタンの下にもネジも外します。

これを知らないと最悪力任せに「ベキッ」ですので注意です。

センターボタンは下からマイナスドライバをつっこんで、テコのように外します。
センターボタン ちなみにセンターボタンの青い線は塗装ではなくて多色成形です。 う〜ん、侮れません。
筐体オープン。 筐体を開けてみます。

Space Saver II Keyboard がNMB製だと納得する瞬間です。

スライドレールは筐体上部と一体化していて、 キートップもスライダ一体化している構造はとてもチープですが、 反面、筐体下面側はここに切り離されたラバードームに底部に配された鉄板と しっかりとした作りになっています。
トラックポイントとメンブレンシート ラバードームは NMBのキーボードらしく、メンブレンシートに一個一個接着されています。 ラバーの色はRT6600系ともRT2300系とも違う、パステルチックなエメラルドグリーンです。

トラックポイントの部分は鉄板に直に止めてあり、メンブレンシートにはその部分に穴があけられています。
トラックポイント基部 トラックポイント基部は見ての通りだいぶ窮屈そうです。基部から直接フレキシブルプリント基板が のびて板金の下にくぐっています。

ちなみにトラックポイントキャップの付く先端部のパーツは外したときなぜか キャップ側について行ってしまい、写真の状態ではキャップはつきません。
トラックポイントキャップ で、これがトラックポイントキャップです。左がSpace Saver II Keyboardので、右がThinkPadのクラッシックドームタイプ。 同じものなのですが、支持棒の先端がキャップにくっついていってしまってます。
トラックポイントのボタン 一方ボタンの方はこんな感じ。
ボタンの構造 スイッチ自体はキーと同じメンブレンシートで、ゲーム機のコントローラ様のラバーバネと、 黒いシートで構成されます。
ボタンのラバー このラバーの背が結構高く押し込む時にぶれるので、ボタンのクリックがいまいちな様です。
メンブレンシートと板金 メンブレンシートをめくるとその下の板金が見えます。

板金部は筐体下面に2本のネジでとめられています。 トラックポイントは裏側からネジ止めされています。
メンブレンシートのコネクタ メンブレンシートは圧着ではなくてコネクタ接続です。
スライダ周りのコストダウンとは裏腹にコントローラ周りはかなりしっかりと作られています。
トラックポイントとコントローラ基盤 トラックポイントとコントロール基盤はこんな風につながっています。
下に見える3つのネジがトラックポイントを固定しているネジです。

板金には打鍵感や筐体剛性のためという側面もあるのでしょうが、一番大きな理由は トラックポイントをしっかり固定するためのような気がします。
トラックポイントモジュール トラックポイントのモジュール。

分解前は背面にプリント基板が在るようなものを想像してたのですが、 検知部分は案外小さいのですね。
コントローラ基盤 コントローラ基盤です。

上のDIPのチップはキーボードコントローラで、 下の小さいチップ2個がそれぞれPS/2コントローラとトラックポイントコントローラなのでしょうか?
コントローラチップ コントローラチップです。

相変わらずさっぱり解らないのですが、 RT235BTWJPのチップが NMBK15R3677で、これがNMBK15R4387なので、結構近いコントローラを使っている様です。
グランド接点 コントローラ基盤になにやら不思議な銅のバネが・・これは一体?
グランド導通 実はコレは板金と触れるようになっていて、おそらくグランド用かと思われます。

トラックポイント絡みの対策でしょうか?
PS/コネクタ PS/2コネクタはさすがに基盤に直付け接続されています。 その下に見えるシールド用とおぼしき銅箔は銅シート(シール)がただおいてあるだけです。
板金側面 板金を側面からみると、底面に対してわざわざ斜めに固定されているが解ります。 これはキーに打ちやすい傾斜をつけるためと、トラックポイントやコントロール基盤のクリアランスを 確保するためだと思われます。
ケース下面 コントローラ、メンブレンシート、 板金を外すと、筐体下面があらわになります。

なんかやっとたどり着いたという感じがします。(^^;
ケーブルは別パーツでしっかりはめられている為はずせませんでした。
成形日 ケースが作られたのは2003年4月17日の模様。販売終了間際まで作っていたのですね。
ケース上側 筐体の上側です。
スライドレールが筐体上面と一体化しています。
スライドレール 見ての通りスライドレールもスライダもただのABS樹脂です。

ここは Space Saver II Keyboard でもっとも悔やまれる部分です。
スライドレール表から 今度は表から。

製造時に、ポディションマーカのあるキーを 間違えてはめこまないため、スライダーの向きが「F」「J」のみ 縦にはまるようになっているのはRT2300と同じです。
ソフトリム 新型トラックポイントキャップのソフトリムをはめてみました。
ソフトリムはテコの原理で軽い力でポインタを移動出来るようになるのですが・・、
ソフトリム横から Space Saver II KeyboardはThinkPadのキーボードよりステップ幅が大きいので、 上へ動かすときキーと干渉してしまいます。
下や横へ移動させるときは良い感じだっただけに残念。
箱 ところでこのキーボードの名前、Space Saver Keyboard II なのか Space Saver II Keyboard なのか 実はよくわかりません。 IBMのサイトでも日本語表記は スペースセイバーキーボートII ですし。
とりあえず最近はコッチの呼び名が流行ってる(?)ようですし、 本レポートでも箱の表記に従って Space Saver II Keyboard にしてみました。
グラビア Space Saver II Keyboardは確かに良いキーボードですが、 そのThinkPadを連想させるデザイン故、IBMというネーム故に 打鍵感に過度の期待をしてしまうのもまた事実です。
本機の打鍵感は決して悪くは在りませんが、残念ながらこの期待に答えられるクォリティでもありません。
意外なことに(失礼)スライダ周り以外はしっかり作り込んでいて、そういう所を見るたびに、無い物ねだりと知りつつも このキーボードがRT6600系の打鍵感を持ち合わせていたらねぇ と思ってしまいます。

<総合評価>

キートップの手触り 梨地処理のプラスティック。
打ったぞ感(クリック感) 明確だが弾性のあるクリック感。
省指力 キーは少々重いが疲れやすくはない。
対腱鞘炎 エセ ステップスカルプチャってどうなのでしょう?
コストパフォーマンス お値段がちょっと高く感じるけれど。
三猫のおすすめ度 ★★★☆☆